◆圧倒的な表現のパフォーマーたち

すごくきらびやかな衣装に、照明も音楽もあって、舞台はとても華やかです。登場人物が小人さんなので、最初はみんなびっくりするかもしれません。でも、楽しく歌い踊る姿に次第に気にならなくなってきます。
障害のあるなしに関わらず、素晴らしいパフォーマンスを披露するタレントが集まっているからなんですね。この歌声を聞いてみてください。

Amazing Grace, How sweet the sound,

この歌声は、佐藤ひらりさん。盲目のシンガーソングライターです。2001年生まれの21歳、東京パラリンピックでは国歌斉唱の重責を担いました。この歌に合わせて、片足のない義足のダンサーが踊っています。

そもそも東さん自身「自分も見世物なんです」と言っています。障害のあるなしに関わらず、この素敵なパフォーマンスを見てほしい。それが「月夜のからくりハウス」。パフォーマーが活躍する舞台を作って、障害者のイメージを変えていたい。普段は見えないけれど「今の社会は、もう“まぜこぜの社会”なんだよ」と知ってもらいたい、ということなのです。

◆令和の「毒りんご」はインターネットで

舞台の物語では、非常に評判になっていて、多くの人が憧れる「歌雪姫」に嫉妬する、ドラァグクイーンが出てきます。ドラァグクイーンとは、どぎつい女装やメークに身を包んだ表現者です。

ドラァグクイーンのドリアン・ロロブリジーダ:鏡よ鏡よ、鏡さん。この世で一番美しいのはだーれ?

:この世で一番美しいのは……歌雪姫でございます。

ドリアン:何ですって? 何なのよ、この女! 全然知らない……後ろ姿しか映ってないじゃない! 絶対ウラがあるに決まってんだけど……。(スマホで検索し始めて)じゃ、「歌雪姫、性悪」。……出てこないわね。じゃ、枕営業してんじゃないの? …うーん、それらしいの出てこない! 出てこないなら……作ればいいのよ。ふふふ。「歌雪姫は、逮捕歴がある」んじゃないかしら! 令和の時代に“毒りんご”なんてもう古いわよね。「毒もインターネットの時代」でございますから。ほほほほ、はははは……

今回の舞台のテーマは「ネット上の攻撃」なんです。デマとか中傷が世の中に広がって、止めようがないくらいですよね、今。ごく一部の人だと思いますけど、あることないことを書いて、意図を持って誰かを攻撃する。それが事実かどうかは関係がない。そういう社会の一面があるわけです。それを物語で表現しています。