静岡県西部の山あいの町に、初めての「スマホ相談所」ができました。お年寄りたちが集うこの相談所は、町のホットスポット。山間部の高齢者がデジタルと向き合う暮らしが始まっています。
この日は、覚えたばかりの「LINE」の使い方を聞こうと女性が訪ねてきました。
「初心者のシンシャがこんなになっちゃう」
「新車になっちゃいましたね」
文字の変換がうまくいかなかったようです。
浜松市天竜区水窪町は、人口約1,700人の町。その半分以上が65歳以上の高齢者です。ここに、2022年8月開店したのがスマホ相談所「FRONT GATE」です。
「ポイントはいつ使えるの?」
「支払いに再度使うことができる」
相談所は、お年寄りたちの寺子屋。オーナーの笹本純一さん(36)です。大手携帯ショップで働いていた笹本さんは、携帯を買うだけでも車で1時間もかかる水窪町の人たちの事情に触れ、自ら、この町に店を開こうと決めました。相談料は無料です。
<「FRONT GATE」オーナー 笹本純一さん>
「1番近くて1時間以上、川沿いの道を下って行かないと携帯ショップがない。そこを通うための免許証を返納しなきゃいけない年代がたくさんいる。世の中はどんどんデジタル化が進んでいくのに、水窪に住んでいる人たちはどこでそのサービスを受けるのかって」
笹本さんは、お店だけでなく、スマホの出張講座も開いています。柳田幸子さん(69)も講座の生徒の一人です。
「撮った写真をデータにしたいときに使えるのがカメラのアプリではなく、スキャナーのアプリがある」
独立前の笹本さんと出会って2年。スマホの扱いにも慣れてきました。
<柳田幸子さん>
「丁度荷物が届いたので支払いをスマホ決済でやります」
「読み取りました」
「これで支払いが完了しました」
「楽です。土曜日でも日曜日でも時間関係なくできることがすごく便利」
笹本さんと出会い、初めてスマホを手にした人もいます。熊崎秀子さん(81)は、相談所に毎日のように通って操作を覚えました。この日は1年ぶりに帰って来た孫と初自撮りです。
「撮れた、撮れた」
「明日死ぬかも」
「何で?」
お次は、帰省できなかった娘とビデオ通話。
<熊崎秀子さん>
「ビデオ通話だから、あんたの顔が出るわけよ。この子がカオリ。いいよ、3人とも元気ならさ。親はいうことないだで。本当にそばにいるみたいだもんね。笹本さんが来るまでは、スマホにしようと思わなかった。ガラケーで十分と思ってたよ。みんながスマホを便利に使えれば、楽しくなるのになと思う」
困ったことがあれば、雪の中でも相談所を訪ねます。あの「スマホ決済」の柳田さんです。決済の細かい仕組みを聞きにやってきました。
<笹本純一さん>
「基本のベースの部分はどんどんできるようになっていて、スマホを活用するみたいな質問が増えているなって実感します」
相談所の帰り、柳田さんが笹本さんにLINEで映像を送ってきました。
<柳田さん>
「思ったより早く雪が降りだして、きのうあたりから氷柱もできてきました」
雪の様子を自らリポートしながら、撮影しました。
<笹本純一さん>
「地元の人が優先。やりたくもないことを無理やりやらせるつもりはなくて、やりたいのであれば、徹底的に付き合うスタンスで、ここにいる」
山の中にできた1軒のスマホ相談所から、水窪のお年寄りたちの生活は変わり始めています。
注目の記事
【全文掲載】高市早苗総理 初の所信表明演説 物価高対策に経済成長、外交・安全保障など詳しい政権運営方針 人口政策・外国人政策も

「太陽系外から飛来」の恒星間天体「3I/ATLAS」が最接近へ 「観測史上3つ目」宇宙望遠鏡が捉えた姿

「また無くなるのでは」と買い占めも…コメ豊作なのに続く高値「増産」は実現可能なのか?【Bizスクエア】

うどんを食べて育った「讃岐うどん雲丹」?!不思議な “食事シーン”をご覧あれ 水産科の高校生が飲食チェーンと共同研究し商品化【香川】

『あの外国人女性はどこに?』1970年万博パビリオンで忘れられない出会い 77歳男性の願い叶うか―― 55年ぶりの万博で起きた奇跡に密着

父親の腎臓を移植した男性 “使命感で” 体育教師の夢捨て人工透析の技士に 31年後に再発…「お父さんが危ない」次に命をつないだのは-









