目指すのは環境への負荷の軽減と高付加価値化
こうした構想が検討される背景には富士山が抱える課題があります。
コロナ禍前の2019年には山梨県側の5合目を訪れた人が506万人に達しました。これは世界遺産登録前の2倍を超えます。
また、来訪者が増える夏山シーズンにはスバルラインでマイカー規制を行っているものの、大型バスなど排気ガスの環境への影響も懸念されています。
富士山は来訪者数の管理と自然環境の保全が求められているのです。
この点、鉄道では排気ガスを出さないこと、全席を指定席の定員制とすれば来訪者数をコントロールしやすくなります。
また、比較的、雪に強いとされ夏山シーズンに集中する観光客数を平準化することも期待されています。
登山者数の管理を求めていたユネスコの諮問機関イコモスは「多くの課題を解決するアプローチとなりうる」と登山鉄道を評価しました。
観光の”高付加価値化”を掲げる山梨県の長崎幸太郎知事も「薄利多売を続けていてはいずれ消費されつくしてしまい富士山といえども世界の人たちからは飽きられる可能性は十分ある」と構想の意義を語っています。(21年2月の会見)
また、5合目は電気が通っていないため観光施設は重油を使う発電機を利用しているという状況があり、鉄道が整備されれば5合目に電気を供給でき、環境負荷の軽減につながるのではないかという効果も期待されています。