シリーズ「ウクライナ侵攻1年~遠い停戦」です。民間人殺害などのロシア軍による戦争犯罪。数々の犯罪を“市民の手”で記録する、ノーベル平和賞を受賞した人権団体の活動を追いました。
首都キーウ近郊コロンシナ村。去年3月末まで、一時ロシア軍に占拠されていたこの村を人権団体「市民自由センター」が訪れました。
目的は「戦争犯罪の証言」を集めること。家族が避難する中、破壊された家に一人、住み続けるスビリーダさん(83)さんに話を聞きます。
市民自由センター スタッフ
「この家は爆撃で破壊されていますね?」
アナトリー・スビリーダさん
「そうですね。あっという間にドーンと飛んできて、窓や壁が全部吹き飛んだ」
「市民自由センター」は去年2月、ロシアの侵攻が始まって以降、戦争犯罪の記録を続けています。
アナトリー・スビリーダさん(83)
「ここは駐屯地にされた、あそこにこっち向きで戦車がおかれていた。あいつら(ロシア軍)は酔っぱらうと必ず砲撃してくる」
次に話を聞いたのは村長。多くの死と向き合った記憶は時として苦しみを伴います。
コロンシナ村 スヴィトラナ・パヴレンコ村長
「人の目を見るのがつらいです、子どもを射殺された両親の目を。どうであれ生きていかなければなりません、私たちは壊されません、ロシアには壊せません」
丹念に話を聞き、「戦争犯罪を記録」する。「市民自由センター」は去年、その努力が認められ、ノーベル平和賞を受賞しました。ロマンツォワ事務局長は活動の意義をこう強調します。
市民自由センター オレクサンドラ・ロマンツォワ事務局長
「ソ連時代、何千人もの人々が殺されました。しかし、誰も裁かれることがありませんでした。公正な裁きが重要なんです、そうすれば歴史を変えることができるんです」
ロシア軍の撤退後、数百人の遺体が見つかったキーウ近郊ブチャ。自転車に乗っているところを殺されたとみられる人もいました。
ウクライナ検察もこうした民間人の殺害や民間施設への攻撃などを捜査していて、ロシアの戦争犯罪が疑われるケースはおよそ7万件にのぼると言います。
その“点と点”をつなぐ、手助けをしている人がいます。イギリスの国際弁護士・ポヴォアスさん。豊富な組織犯罪捜査の経験からウクライナで検察官に捜査の手法を指導しました。
イギリスの国際弁護士 ナイジェル・ポヴォアスさん
「すべての犯罪はジグソーパズルのようなもので、そこにパターンがあるのか確認する必要があります」
各地で共通する“犯罪のパターン”が分かれば、プーチン大統領ら指導者の責任追及にもつながると考えています。
イギリスの国際弁護士 ナイジェル・ポヴォアスさん
「重要なのはロシア政府やプーチン大統領、軍幹部が戦争犯罪や非人道的な罪に関与した証拠があるかどうかです」
ただ、捜査が進んでも、既存の機関ではプーチン氏らの責任追及は難しいとみられ、「特別法廷」の設置を求める声も高まっています。
戦争犯罪を裁くため、市民の努力は続きます。
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