■プロ野球 日本ハム 6-2 オリックス(28日東京ドーム)

27日の試合前までで打率.143と不振に苦しんでいた日本ハム・今川優馬(25)のバットが”ついに火を噴いた。

27日のオリックス戦でもバックスクリーンにホームランを放った今川は、2番・レフトでスタメン出場。迎えた1回の第1打席、オリックス先発田嶋大樹(25)の144キロを豪快に振りぬき、先制の左越え4号2ランを放ち勢いに乗ると、迎えた第2打席も1ストライクから143キロ直球を振り抜き、レフトスタンドへ。2戦3発と息を吐くと、新庄ビッグボスは両手を広げる「whyポーズ」を見せて出迎えた。さらに3打席目には、センター前に抜けようかというショートへの強い当たりで内野安打。4打席目はオリックスの3人目本田仁海(22)からセカンドへ内野安打。2日連続の猛打賞となる4打数4安打を記録した。

北海道札幌市出身。6人きょうだいの長男として生まれた。爆発的な長打力は、日本球界ではあまり見かけることのない、アッパースイングから繰り出される。幼少期から日本ハムのファンクラブに所属し、現役唯一のファンクラブ会員として活躍する今川。ここまでの今川の野球人生は順風満帆とは決して言えないものだった。

高校時代は背番号16の「控え選手」。プロ野球とは程遠い存在だった。東海大北海道キャンパス進学後も3年春途中までは「ベンチ外」。人生を変えたのは、当時メジャーリーグでホームランを量産していた現役最強のホームランバッター、ミゲル・カブレラ(現デトロイト・タイガース)。周囲からの反対意見も多かったが、カブレラの常識とはかけ離れたスイングを自身のバッティングに取り入れ、アッパースイングに己の野球人生をかけると決めた。すると、大学4年生で迎えたリーグ戦で打撃の才能が一気に開花。所属する札幌学生野球でリーグ首位打者を獲得。さらにはリーグのホームランの記録を塗り替え、その名をとどろかせた。だが、例年にも増して豊作だった2018年ドラフトは大阪桐蔭の藤原恭大(現ロッテ)や根尾昴(現中日)など、甲子園を沸かせたスター選手が多く指名を受け、今川の名前は最後まで呼ばれることはなかった。再起を誓った社会人野球ではJFE東日本の2番打者として、都市対抗野球優勝に貢献。迎えた2020年ドラフトで日本ハムから6位での指名を受けると、大粒の涙を流し、プロ入りの喜びをかみしめた。

夢にまで見たプロ野球の舞台で、自身初の2試合連続猛打賞、同一カード3本塁打。2年目の今年はまだまだ“夢の途中”。お立ち台に上がった今川は「ずっと開幕から打てなくて勝てなくてずっとしんどくて悔しかったんですけど、思い切って打席に立って”執念”で振りぬきました」と笑顔で話した。