異次元の金融緩和から10年。日本経済は大きく動き、株価は上昇した。が、一方で現在その弊害は計り知れない。そんな中、間もなく次期日銀総裁人事案が示される。次の総裁にはどんな人物が適任なのか…。そこに思いを巡らすためにも日銀と政府の関係を注視する必要がある。番組では異次元の金融緩和につながる“物価目標2%”を決定した時の日銀副総裁を取材。
すると「あの時抗議の辞任まで考えていた」と政治的圧力を感じていたことを吐露した・・・。
■「政治がいわば強要する形で金融政策の根幹に手を突っ込んでくる」
まず10年前、黒田日銀総裁によって異次元の金融緩和が示される前の段階で、政治と日銀の間に何があったのか振り返る。
2012年、当時下野していた自民党総裁、安倍晋三氏は、デフレ脱却のために物価上昇目標2%に向け大胆な金融緩和を訴え、設定が見送られるなら日銀法を改正すると公約にも掲げていた。そして12月16日、衆院選で自民党が圧勝する。

選挙の熱も冷めやらぬ2日後の18日、呼び出されたわけではないだろうが、白川日銀総裁がまだ総理にもなっていない安倍氏と会談のため自民党本部を訪れる。

すると、翌日19日からの日銀金融政策決定会合で物価目標2%を“検討する”と表明されることになる。まさに急転直下の展開だった。一体何が、安倍氏と白川氏の間であったのか…当時日銀副総裁だった人物が番組のインタビューに応じた。

元日本銀行副総裁 西村淸彦氏
「民意である選挙に圧勝した政党からの要望ということは非常に重く受け止めなければならない。しかし、それが中央銀行の独立性に影響を与えるような形で現れてきたということは非常に危機感を感じました。(白川総裁が安倍氏を訪問した時のことは)日本銀行がこの議論を独立性ということから無視するという形になると、言ってみれば首をとりにいくというような形ではありませんけれども、それを匂わすような・・・、穏やかですが鋭い議論がなされたというふうに私は解釈してます」
遠回しに言葉を選ぶ西川氏だが、つまりは安倍氏の要望に応えないと白川総裁が辞任に追い込まれかねない雰囲気だったのだろう。
元日本銀行副総裁 西村淸彦氏
「(自民党からの)プレッシャーがあまりに強いために、私も場合によっては抗議の辞任というようなことも考えなければいけないような状態・・・(中略)、ここまで譲歩するか、譲歩すべきかというところですね。政治にもみくちゃにされて独立性が崩れるように見える状況になったならば、これは政治がいわば強要する形で金融政策の根幹に手を突っ込んでくるということには、私は耐えられなかった」














