石川県志賀町の海岸で男性3人が行方不明になり、北朝鮮による拉致の疑いがある「寺越事件」から今年で60年になります。解決の糸口が見えない中、残された家族らが、ラジオに思いを乗せて海の向こうへ声を届けます。
特定失踪者問題調査会が運営するラジオ放送「しおかぜ」と、政府が運営する「ふるさとの風」は、北朝鮮にいる拉致被害者に向けて、遠くまで届く短波放送で毎日深夜にニュースや家族からのメッセージを届けています。

このラジオ放送の公開収録が1月28日、金沢市内で行われ、石川県内の特定失踪者の家族も出演しました。

1963年5月、志賀町の海岸で、寺越昭二さん(当時36)、弟の外雄さん(当時24)、おいの武志さん(当時13)が漁に出かけたまま失踪し、北朝鮮に拉致された可能性があります。

このうち武志さんは2002年に一時帰国し、現在も北朝鮮国内で暮らしています。
収録当日、武志さんのいとこたちが、思いを口にしました。
寺越昭二さんの長男で武志さんのいとこ・寺越昭男さん
「武志、元気か。昭男や。おやじ、外雄おっちゃん、武志3人が突然いなくなってから、今年で60年になる。言葉も分からず、自由も食べ物もない北朝鮮での生活は、言葉に尽くせぬ苦労や苦難があったことだと思う。武志、生きろ。必ず苦労に報われる時が来る。また会おう」

寺越昭二さんの三男で武志さんのいとこ・内田美津夫さん
「武志も一時帰国してから21年たつし、昭男も政男も美津夫も70歳代になってしまった。友枝さん(武志さんの母親)や、おらちゃ3人が元気なうちにもう一回会いたいな。いま北朝鮮では冬の厳しい寒さと食事などで大変困難な生活をしていると思います。頑張れ、頑張れとしか言えないけど、必ず日本から迎えに行きます。希望を持って絶対に諦めないでいてください」

突然の別れから今年で60年。昭男さんたちは、今回の公開収録が最後の機会と捉え、出演を決めたといいます。
寺越昭男さん
「これが最初で最後の武志に向けてのメッセージになると思っている」

武志さんのもとへメッセージが届くことを信じて。収録された内容は「しおかぜ」で2月11日から、「ふるさとの風」で2月20日から放送されます。