2019年に京都府で発生した放火殺人事件の被害者の遺族が高知県警で講演を行い、事件や、その後受けた支援に対する思いを語りました。
(放火殺人事件で娘を失った 渡邊達子さん)
「誰もが自信を持って生きていける社会があって、精神的にとても強くてとても優しい人が多ければこんなことは起こらなかったのでは。あの子がいなくなってさらにその気持ちが強くなっています」

「想いと願い」と題して行われた、犯罪の被害者遺族の講演会。講演したのは滋賀県在住の渡邊達子さんと息子の勇さんです。
2019年7月、京都府の京都アニメーションのスタジオで起きた放火殺人事件で、娘と妹にあたる美希子さんを失いました。この事件では美希子さんを含む36人が犠牲になりました。

(達子さん)
「(未希子さんは)結構飾り立てることはしないが、自分の身は小ぎれいにしていたので、この姿は、お葬式せなあかんけど一般のお葬式みたいに『見てや』と言えるような姿ではないから“隠さなあかん”と思った」
(達子さん)
「警察から遺品が届いた。燃えたカバンやあの子が着けていたであろう時計などいろんなものをいっぱい届けてくれた。本来であればかばんにしても焼けた跡があるものなので、もっとすすがついていて、時計も真っ黒けというのが普通だと思うのに、かなり頑張ってきれいにしてから持ってきてくれたのが一目瞭然だった。真っ黒になっている時計とかを見るとそれなりにショックが大きいと思い、配慮してくれているんだな、ありがたいことだな、優しいなみんな、と思った」

(勇さん)
「(事件当時の)感覚自体は精神的に味わったことのない感情で、ぐちゃぐちゃな感じだった。代われるなら代わりたいとか私自身もアニメやゲームが好きだったのでそういうことを好きでアニメを一緒に見たり、漫画を交換したりしていて、私自身が(アニメや漫画を)好きじゃなかったら彼女に興味付けしなかったんじゃないか、僕がいたからそういう影響を与えてしまったのではないか、自分のせいではないか、という思考がどうしても出てきてしまったというのを記憶しているし、今でもそういう要素は残っている」
(勇さん)
「カウンセリングを受け始めてから、妻からも『目に光が戻ってきたね』と言われ当時は目が死んでいる状態だったらしく、自分では分からなかったが定期的に来ていただいているカウンセラーさんにはありがたいなと思うし(支援に繋げるという形で)助けてくれている警察や国にも感謝したい」

(勇さん)
「我々の周りが幸せであったとしても、今回の事件を起こした人の動機などは100%はかれるものではないが、その人の幸福度が高かったらこのようなことは起きなかったのではと思う」
2人は、犯罪被害者の支援にあたる人たちのフォロー体制も整えてほしいと話していました。講演を聞いた警察官や被害者支援の関係者らは被害者遺族の思いに耳を傾けていました。