バレーボール元日本代表の益子直美さんがユニークな試みを全国で展開している。「監督が怒ってはいけない大会」だ。その名の通り監督が怒らないことがルール。国内のスポーツ指導でしばしば報告される「体罰」や「パワハラ」問題に一石を投じようという企画だ。大会を取材すると「怒っているつもりはない」という指導者側の心理や子供たちとの認識の差が浮かび上がった。


◆「怒る時代は終わった」勝利と育成の鍵

「普段、監督が怒っていると思う人はいる?」小学生に問いかけたのは元バレーボール全日本代表・益子直美さんだ。福岡市城南区の会場に29日に集まったほとんどの子供が「はい」と手を上げた。福岡県内のバレーボールチームの子供たちと“監督”の約150人が参加し、これから始まるのは「監督が怒ってはいけない大会」だ。2015年に初めて福岡県で開催され、2022年からは全国各地で開かれている。

益子直美さん「怒らないと緊張感がつくれない、動かせない、やらせられない、できないのはもう本当に時代が終わった。怒りを手放して勝利と育成が手に入る、指導方法が絶対あるはずです。この大会でぜひ怒りを封印して、新しい指導方法にチャレンジしてください」

ルールは実にシンプルだ。監督が選手に怒ってはいけないだけなのだから。もし怒った場合は、「×」印のついたマスクをつけなければならない。試合が始まると監督からは「おしい!もう一本!ナイスカバー!」などと“前向きな言葉”が続いた。

金森監督「普段はちょっと怒ったりもしてますけど、きょうは楽しくやってます」
山崎監督「お母さんたちには『いつも怒鳴っています』と言われますが、怒鳴ってはいません。めちゃくちゃほめるし、意識して笑いに持っていったりしています」

監督たちはこう話す。しかし、子供たちの目には映る普段の“監督像”は違った。