パチパチと油の弾ける心地よい音が店内に響く。いわき市湯本温泉街からほど近い場所にある「鳥静」は、現在、から揚げのテイクアウト専門店として多くの人々に親しまれています。

地元で愛されるこの店には、足しげく通う常連客も少なくありません。「週に3、4回くらいは来てます」と話す男性は、その魅力を「揚げたてで提供してもらえるので。酒のお供ですね」と語ります。また、小学生の頃からこの店の味を知るという女性客は「友だちに紹介してもらって、あそこのから揚げおいしいよって言われて来てから、結構来てます」と話し、骨付き肉が好きなことから、この店のから揚げがお気に入りだと笑顔を見せます。多くの客にとって「鳥静さんって言ったら、湯本で老舗ですからね」という認識が根付いています。

名物はボリューム満点の「骨付きから揚げ」

鳥静の看板商品であり、多くの客が買い求めるのが名物の「骨付きから揚げ」です。外はカリッと、中はジューシーに揚げられたボリューム満点の一品で、部位は「もも」と「手羽」の2種類から選ぶことができます。

このから揚げに使われるのは、国産の丸鶏。店内でさばき、もも2本と手羽2本の4分割にしてから、秘伝の味付けを施して揚げています。この骨付きから揚げは、2代目の静夫さんが昭和30年頃に考案したとされています。

現在お店を切り盛りするのは、4代目の後藤寛行さん。「プレッシャーというか、まあ私はできることをやってるしかないので。今まで引き継いだものをその通りやっていくっていう形がメインなので」と語り、長年親しまれてきた味を実直に守り続けています。

100年の歴史を紡ぐ、四代の物語

鳥静の歴史は、昭和元年にまで遡ります。今年で創業100年目を迎えました。初代の清蔵さんが茨城から移り住んだ際、「鶏が食べたい」と言ったことをきっかけに、鶏肉専門の卸と精肉店として商売を始めたのが起源です。創業当初は、鶏めしやすき焼き風の鶏鍋を出前で販売していました。

そして昭和30年、2代目の静夫さんが骨付きから揚げを始めます。当時は利用価値が低かった雄鶏を有効活用するため、ヒヨコを大量に買い取り、育ててからから揚げにして販売したのが始まりでした。当時、石炭の採掘で栄えたこの地域では、炭鉱で働く労働者にとって精のつく鶏料理は人気を博し、骨付きから揚げは一気に名物として定着しました。

その鶏の切り分け方や味付けは、今もなお企業秘密。代々受け継がれてきた伝統の味です。4代目の後藤さんは、「製法とか味付けに関しては変わってはいないんですけども、今風の味ではないのかもしれない。ちょっと懐かしい味わいなのかなとも思います」とその味を表現します。

約40年前には、3代目の一郎さんが食堂事業を展開。宴会やから揚げ定食などのランチメニューで近隣の人たちが集い、店は大いに賑わいました。こうして鳥静の味は、地域の人々にとって懐かしい故郷の味となっていったのです。

時代と共に変化し、未来へ繋ぐ味

順風満帆に見えた食堂経営でしたが、コロナの影響、そして約4年前に3代目の一郎さんが亡くなったこともあり、食堂は閉店。現在のテイクアウト専門店へと業態をシフトチェンジしました。

そこで新たな試みとして力を入れたのが、お弁当の販売でした。「から揚げ弁当をちょっと前面に押し出してやってみたところ、お昼のお客さんの入りがかなりありまして」と後藤さんが語るように、この挑戦は成功を収めます。ご飯と骨付きから揚げというシンプルなお弁当が、今では昼どきの人気商品となりました。

お弁当には、骨なしのシンプルなから揚げ(3種類の味)もあり、プラス料金で白米を創業当時から続く伝統の「鶏めし」に変更することもできます。ここでも、初代から受け継がれる味が大切に守られています。

「今まで受け継いだものをそのまま繋げていくのがまずベース」と語る後藤さん。その上で、「食堂事業も時期が来たら、また経営してみたいなとは思ってますね」と未来への展望も明かします。

100年という長い歴史の中で、スタイルを変えながらも伝統の味を守り続ける「鳥静」。その懐かしくも力強い味わいは、これからも地域の人々に愛され続けていくことでしょう。

『ステップ』 
福島県内にて月~金曜日 夕方6時15分~放送中
(2026年10月1日放送回より)