国内随一の蔵書数を誇る東京の国立国会図書館。貴重な本や資料を後世に残すため、ある熊本の企業が一役買っています。

見慣れない巨大な機械と鳴り響く大きな音。

作業する人の手には、何十枚と積み重なった紙。

実はこれ、巨大なプリンターです。

ここは印刷や冊子の製本などを手がける熊本市のコロニー協会福祉工場。約50人の従業員が働いています。

熊本県コロニー協会 大島 武文 工場長「ここでは印刷とデジタル化事業の2つの仕事を障害のある方にして頂いている所で、障害福祉サービス事業の一種です」

工場はもともと結核患者の社会参画を支援しようと1949年に設立。その後も障害者の就労支援に取り組んできました。

70年あまりの長い歩みの中、2022年から新たな取り組みが始まっています。それが…

大島 工場長「昨年から国立国会図書館が保管している蔵書をデジタル化・電子化していく」

東京の国会図書館では、所蔵資料の保存などを目的に2000年からデジタル化を進めていて、熊本など全国8か所でこれまで300万冊以上がデジタル化されています。

工場で働く三栗野 潔(みくりの きよし)さん(55)は、勤続17年のベテラン社員です。

福岡県大牟田市出身の三栗野さんは生まれた時から聴覚に障害があり、普段はほとんど筆談と手話でコミュニケーションをとっています。

--普段のお仕事は何をされていますか?
三栗野 潔さん「出力紙のチェックです」

文字の間違いなどを瞬時に見つける高い集中力をかわれ、デジタル化の作業も兼務するようになりました。

デジタル化の作業は主に3ステップ届いた本のクリーニング、機械でのスキャン、最後に画像のチェックです。

文化的価値の高い本も多く決して傷つけることはできません。そのため機械のわずかな埃さえも見逃しません。

決められた枠に収め、決められた余白を作る。狭く薄暗い空間の中には常に緊張感が漂います。

多い日には800コマ以上の撮影をするといいます。

三栗野さん「溝に近い文字を鮮明にとるため、本を水平に保って撮影します」

三栗野さんが熱心に打ち込む姿に職員が圧倒されることもしばしば。厚い信頼を寄せています。

山西 よしこ 係長「何かを分かろうとするのをすごく強く感じます。やり始めたら楽しいって言ってくれて、本当に助かったと言うとおかしいけど本当に助けられてる部分が多いんですよね」

これまでこの工場でデジタル化したのは、2022年7月から半年でおよそ3000冊ページ。数にすると90万ページに上ります。

三栗野さん「目標のコマ数があるので一生懸命やることが楽しいです。これからも続けたいと思っています」