高山植物の消滅が引き起こす「土石流」の危険

1979年 南アルプス塩見岳のお花畑(提供:静岡大学防災総合センター増澤武弘客員教授)
2000年 鹿の食害を受け枯れてしまった塩見岳のお花畑 (提供:静岡県立農林環境専門職大学短期大学部 鵜飼一博准教授)

長年にわたって南アルプスの植生の研究をしてきた静岡大学防災総合センター客員教授の増澤武弘氏は、「あれだけの個体数の鹿の空腹を賄えるだけの食料は、あの場所には足りてない。遅かれ早かれ、鹿の大群は、餌を求めてさらに広く上下に移動していくことになる」という。

鹿は、小さくて若い木や、木の芽も食べる。
「あの数の鹿が食欲に任せて若い木などを食べて回れば、やがて木も育たず、森林が無くなってしまう」と増澤客員教授は懸念している。

そして最も心配なのが、高山植物が消滅してしまうことだそうだ。

その可憐さで登山者の目を楽しませている高山植物は、根をしっかり土中に張り巡らせる。地盤を安定させることで、実は安全登山にも寄与している。

しかし、鹿が高山植物を食べ尽くし、さらに根も踏みつぶしてしまうと、高山植物は根絶されてしまう。すると、高山植物に守られていた表面の土壌がむき出しになり、結果的に、雨や風などで、容易に削り取られ、土石流の元になるリスクがあるという。

実際、すでに南アルプスでは、こうした現象があちこちで起きている。

「増え続ける鹿に、どう向き合えば良いか」増澤客員教授は思い切った対策が必要だという。「人間が持っている知恵と力を振り絞って、鹿の数を減らすしかない」。

天敵がいないと言われるニホンジカ。

長野県では捕獲計画も立てられてはいるが、ハンターの老齢化による人材不足や捕獲困難地域の多さなど様々な難題が立ちふさがっている。

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<プロフィール>
執筆者:永山由紀子
1989年東京放送(現TBSテレビ)入社。企画・プロデュースした『小屋番 ~八ヶ岳に生きる ~劇場版』(2026年)は蓼科高原映画祭にて9月に上映予定。