「日本のご主人様は誰だ」録音・録画データが暴く暴行、暴言の実態

暴力を振るわれるミャンマー人男性(撮影 農業法人で働く外国人)

保護された彼女たちや、東京へ逃れた37歳の男性Xさんなど、被害者たちは手ぶらで逃げ出したわけではなかった。彼らのスマートフォンには、農場内で日常的に行われていた怒鳴り声や暴行の瞬間が、音声や動画として詳細に記録されていた。

「日本のご主人様は誰だ」「ミャンマーに帰してやる」「在留カードを取り消してやる」といった脅迫の数々、さらには顔面をビンタする音や、胸ぐらをつかんで引きずり出す映像が、動かぬ証拠として残されていたのである。

札幌地域労組(8月21日 札幌市北区)

8月20日、札幌地域労組に加入したミャンマー人女性4人は、この農業法人に対し、団体交渉の開催を要求するため再び京極町へ向かった。鈴木顧問と車に乗り込んだ彼女たちは、京極町内で法人の父親や長男の姿を遠くから見ただけで小刻みに震え、後部座席に身を沈めて悲鳴を上げるほど強いトラウマを抱えていた。当初は自ら申し入れに参加する予定だったが、恐怖のあまり車内から見守ることを余儀なくされた。

札幌地域労組は、長男と次男に対し、外国人労働者に対する暴行・虐待行為の即時停止、セクシャルハラスメントの謝罪と補償、未払い賃金の全額支払いを要求した。

突然の訪問に戸惑った長男らは「この場では答えられないから持ち帰らせてほしい」と回答を保留。その後のHBCの取材に対しても「今は答えられない」「そもそも誰がいなくなったのか名前もわからない」とし、長男と次男は自らの暴力行為について否定した。

ミャンマー人女性たちが働いていた農業法人(北海度京極町)

父親は取材に応じず、この親子とは別の法人代表から「9月中旬を目処に調査結果を回答する」と連絡があった。

団体交渉を申し入れたその日も、新たに2人のミャンマー人男性が大きなスーツケースを転がして法人から脱出を果たした。

脱出してきたミャンマー人男性(8月)

その一人、23歳のFさんは、「寮を出る時に長男から『本当に行くのか。お前たちがいないと明日から仕事がまわらなくなる』と言われた」と明かした。畑の機械を操作できる男性労働者が抜けることへの負い目を感じつつも、Fさんは「それでも行きたい」と決意を固めて脱出した。Fさんは解放感に満ちた表情を見せながらも、「残った友だちの心配をしている」と、未だ農場に残る仲間を案じていた。