教科書を半分否定した、コスモス薬品

ところが、この教科書を半分否定している会社があります。フード&ドラッグ、略してフードラの代表格、九州発のコスモス薬品です。

コスモス薬品は、日替わりの特売をやりません。ポイントカードもありません。支払いは、ほとんどのお店で現金払いが基本です。それでいて売上はおよそ1兆1,000億円と全国トップクラスで、お店は2026年5月末で1,708店、食品が売上の62.9%を占めます。同社は日替わりの特売をむしろ「おとり販売」と表現する側で、そのかわりに、商品の値段を日替わりで上げ下げせず、毎日同じ低価格で売るのを基本にしています。エブリデー・ロー・プライスと呼ばれる売り方です。

日替わりの特売をやめると、棚の値段の貼り替え作業も、売り場の組み替えもいらなくなり、浮いた人件費を値段に回せます。キャッシュレスを原則入れていないのも同じ理由で、カード会社に払う手数料の分まで値段で返す、という考え方です。廃棄ロスの大きい生鮮三品(魚・肉・野菜)の専門売り場は基本的に持たず、会社の発表では、食品の廃棄は2024年度、食品の売上100万円あたりわずか1.68キロ。安売りのお店ではなく、ムダをそぎ落とすお店なのです。

安さの裏方は物流。お店を1.5キロ間隔で建てる理由

もうひとつ、フードラに欠かせない裏方が物流です。食品は薄利で、重くて、しょっちゅう補充が要る商品なので、トラックが効率よく回れないと、あっという間に赤字になります。

だからコスモス薬品は、お店を同じ地域に密集させて建てます。九州の唐津には、店舗どうしの距離が1.5キロという区間もあるほどです。近くに集めれば、1台のトラックで何店舗も回れて、配送コストが下がります。1店舗あたりの宣伝や販売促進のコストも下がります。これが「ドミナント出店」と呼ばれる、地域を面で埋める戦略です。九州はコスモス薬品、北陸はクスリのアオキとゲンキー、東北は薬王堂、北海道はツルハやサツドラ。ドラッグストアの顔ぶれが地域によって違うのは、各社が自分の地元にお店と配送ルートを密集させて、面で固めているからです。