全国で書店が姿を消す中、長野県諏訪市の商店街に小さな本屋さん「言事堂(ことことどう)」をオープンさせた女性がいます。

JR上諏訪駅からほど近い、諏訪市・末広町(すえひろちょう)の商店街の一角。
元々は温泉旅館の従業員などが下宿として利用していた建物、築100年は経過しています。
地元の古材のリサイクル店に依頼し、2022年の10月から改修にいそしむ宮城未来(みやぎみき)さん。
「これは全部私が作りましたけっこう大変でした、自分の店、那覇でずっとお店やっていたんですけど、その時も本棚は自分でずっと作ってたんです、本のサイズとか壁にぴったりの本棚って作ったほうがおさまりがいいので」
香川県出身。
沖縄で14年、古書店を営んできましたが、体調を崩したため2021年、廃業。
体調が戻り、もう一度書店をと考えた際、目にとまったのが、現在、改修を依頼しているリサイクル店のSNSに載っていた「地域に本屋を開いてほしい」という投稿でした。

「湖の周りに都市があってそのまわりにおっきい山に囲まれていて、全く沖縄といた時と環境が違うのでここに住んだらどんな風な生活おくれるのかなと」

オープンを2日後に控えたこの日、作業の前に向かった場所があります。
この地域で100年続く太養(たいよう)パン店。
3代目の奥村透(おくむらとおる)さん。
改修を手伝うなど、宮城さんを熱心に応援してくれる商店街の先輩です。
パンを買いに来るお客さんに、宮城さんの店を宣伝します。

(奥村さん)「本屋さんとかマジでなかなかないから本当にうれしい、以前は末広の町のなかで全部そろったので、生鮮産品もあったし本屋さんもすぐその四つ角の右側にあったりしてみんななくなっちゃったんでね、中心市街地ってすごい高齢化進んじゃっているので、みんなそのうち車に乗れなくなったときのこととか考えたらやっぱり自分の町で生活できるって大事ですよね」
末広町の商店街では、地元で生まれ育った若い世代が生活の拠点を郊外へ移すケースが増えているといいます。
人が少なくなるにつれ、精肉店や鮮魚店など、個人店は次々と店をたたみ、以前は身近にあった書店も歩いて行ける範囲にはなくなりました。
店には本棚がずらり。
オープン直前、残るは本を並べる作業です。
およそ5000冊の中心は美術書です。
大学の陶芸科で学び、卒業後は沖縄のギャラリーで展覧会の企画などの仕事に携わってきました。
当時は、集まる美大生たちに必要な専門書があまり手に入らず、それならばと、ギャラリーの中に小さな図書館を作った宮城さん。
沖縄で古書店を開いたのもその際に本を集める面白さに気付いたことがきっかけでした。
この店では、初めて、郷土の歴史書や文庫といった新刊など、地域と生活に寄り添う本をそろえます。

「すごく不安はたくさんあるんですけど工事中でも前を歩いている方が何屋さんができるのってよく聞かれるんですけど、本屋さん作るんですよって言ったらすごいやっぱ喜んでくださってて地域のみなさんに親しまれる本屋さんを一番めざしたい」
「本離れ」が進み、近年は全国から書店が消えています。
2012年に1万6722あった店は22年には1万1952店と、この10年間でおよそ3割減りました。

「本を読んだり見たりする楽しみを知っているし悲観的になることだけではない自分が一番助けられたのは学生時代でしたね、いろんな悩みをもっているがそれを誰かに話す勇気もないしひとりで抱えてしまっている、そういう時に本を読むことでいろいろ納得できることをその中に発見したりすごく優しい言葉をすごくいいタイミングでかけてくれるような存在だった、皆さんに本というものがすごくいいものだよというのを今よりもっとどういう風に伝えたらよりよくわかってもらえるのかということに集中したい」