「自分よりも不幸な人を見たい」という心理
これまでの物語を振り返ると、ハッとさせるセリフが数多くある。例えば、第4話の「不幸になった人がずっと不幸でいてくれないと困ることでもあるんですかね」という咲子のセリフ。樹生と花火を見る前の会話だ。
このセリフは、夫が行方不明の妻、妻を亡くした夫、という目で見られることを気にして、自分の感情を出せずに苦しむ心情が表れた言葉だ。「世間」が求める“正しい”遺族・被害者の姿についての、生方さん自身の思いも込められている。
「妻を亡くした夫が再婚したと知ると、世間にはそれを非難する人もいる。不倫したわけでもなく、その後出会った人と恋愛して結婚しても、何も悪いことではないですよね。他人なのだから『よかったね』となればいいだけの話に、なぜか『亡くなった奥さんがかわいそう』みたいな意見が出てくる」
匿名で発信できることもあり、SNSではさまざまな過激な意見が飛び交うことは実際にある。
「その考え方も分からなくはないですが、それを本人に投げかけるのは、違うんじゃないかと。人って、不幸に対して『かわいそう』と言いたいんですよね」
生方さんが過去に描いてきたドラマでも “かわいそうなキャラクター”は人気があったそうだ。しかし、そのキャラクターに少しでもいいことがあると、今度は人気が落ちる。“かわいそうだと言いたい”心理を、これまでのドラマの反響からも感じていた。
自分よりも不運、不幸な人と比べることで安心感や幸福感を高めることを心理学で「下方比較」と言う。生方さんはこのことについて、「自分のメンタルを保つための処世術だと聞いたことがあります。ただそれを人に向けてはいけないのではないでしょうか」と話す。
「咲子のセリフ一つで、そうした攻撃的なことをする人の意識を変えることはできません。ハッとする人がいたらラッキーくらいの感覚です」
簡単なことではないと分かっている。けれどどうしても伝えたいという思いが、咲子のセリフには詰まっている。














