「中国のゴルバチョフ」と呼ばれた鉄腕宰相

中国の朱鎔基元首相が8月12日、97歳で亡くなりました。彼が首相を務めたのは1998年から2003年までの5年間、江沢民主席の時代です。私が新聞社の北京特派員として中国に滞在していた時期の首相であり、その日々の活動や判断、政策を間近で追いかけていました。

退任してから23年が経過した今、なぜ私が彼を今回のテーマに選んだのか。それは個人的な思い出を語るためではなく、「リーダー像」というものを考えてみたいからです。これは「中国の首相」という枠にとどまらず、どの国であれ、あるいは国家に限らず、あらゆる組織の牽引役として共通する大切な要素を彼が持っていたと思うからです。

中国の首相というと、トップである国家主席を補佐し実務を担うというイメージが強いかもしれません。日本でよく知られているのは初代首相の周恩来氏ですが、歴代首相の中でその周恩来氏と共に、今も中国国民の思慕を深く集めているのが朱鎔基氏ではないでしょうか。その理由は、彼の圧倒的な実行力と清廉さにあります。

朱鎔基氏を表す言葉でよく知られるのが「中国のゴルバチョフ」です。ペレストロイカを推進した旧ソ連のゴルバチョフ書記長になぞらえ、改革のリーダーとして称賛されました。その辣腕ぶりから「鉄腕宰相」とも呼ばれ、彼を抜擢した当時の最高指導者・鄧小平氏は、朱氏を「経済がわかる男」と表現しました。

容貌は吊り上がった眉に鋭い眼光があり、仕事への並々ならぬ厳しさが感じ取れます。しかし、厳しさだけでなくユーモアも持ち合わせており、本人はその迫力のある顔について「ずいぶん損をしてきた」と言ってのけたこともありました。