30年かけて作り上げた「哲学」

このフォームと足袋の組み合わせは、偶然生まれたものではない。比嘉兄弟の父であり、監督でもある比嘉敏彦氏が、30年をかけて構築してきた競技哲学が生み出したものだ。

本部高校勢の独自フォームを生み出した比嘉敏彦氏

かつて自身もオリンピックを目指していた比嘉監督は、パワーを重視する試技で怪我が続き、その夢を断たれた。その後、後進の指導にあたり、オリンピック選手を輩出するなかで、「筋力のない選手がどうすれば世界のレベルで戦えるか」を問い続け、試行錯誤を重ねた。そしてたどり着いたのが、柔軟性を高め、自身の体重を最大限に生かすフォームだった。

足袋型シューズの採用は、このフォームを突き詰めた末の必然だったと言える。

1年生の弟・比嘉歩:
「自分たちは力があまりないから、その分、体を使って取る(持ち上げる)という感じ」

筆者は、元々体が硬く、泣きながら柔軟運動に励んでいた幼い歩の姿も見ている。彼が今では高校新記録を叩き出すに至ったのも、父親の敏彦氏の哲学があったからだ。

高1にしてスナッチ日本高校新(124キロ)、男子65キロ級を制した比嘉歩



父の競技哲学を全身で受け止め、日本一に輝いた歩はこう話す。

「お父さんが教えてきた先輩方全員を見ているので、一番ぜいたくだと思います」