第168回芥川賞が発表され、選ばれたのは、佐藤厚志さんの「荒地の家族」、井戸川射子さんの「この世の喜びよ」の2つの作品。このうち佐藤さんは、仙台市内の書店で働きながら8か月ほどかけて、作品を書き上げたそうです。

芥川賞に“書店員”作家 テーマは東日本大震災

作者は、自らの作品を誇らしそうに報道陣に向けました。

芥川賞受賞 仙台市在住 佐藤厚志さん
「(発表前)神社でおみくじを引いた時には“願いは届かず”“日々の幸せを大事にして下さい”と書いてあったので、あす早い(帰りの)新幹線をとってしまって、地元の期待に応えられて、すごくうれしい思い」

第168回芥川賞に選ばれたのは、佐藤厚志さん(40)の「荒地の家族」です。

作品の舞台は、宮城県内の町。40歳の植木職人の男性が主人公で、東日本大震災の津波で仕事道具を失い、その後には、妻を病気で亡くした喪失感を抱えながら、生活を立て直そうとする物語です。

芥川賞受賞 佐藤厚志さん
「(震災が)忘れられることに、少しささやかな抵抗になれば、結果的に良いかなと」

佐藤さんは、執筆活動の傍ら、仙台市内の書店で働いています。地元では…

佐藤さんの勤務先の書店 店長
「書店で一緒に働く仲間として、こんな素晴らしいことが起こるとは、夢にも思わなかった」

「荒地の家族」は忙しい日々の中、8か月程かけて書き上げました。

自身も仙台市内の自宅で被災した佐藤さん。震災を扱った小説を書くにあたって、フィクションではありながらも、嘘のない作品を書くよう心掛けたといいます。

芥川賞受賞 佐藤厚志さん
「自分の書きたい物語があがって、それに震災を合わせるのは上手くないと思っていて。震災をできるだけ中央に据えて、向き合って書かないと、真実は込められないのかな」

もう1作は井戸川射子さん(35)の「この世の喜びよ」が選ばれました。

どちらも初ノミネートでの受賞となりました。