海は大海原を進んでいた。午後3時前、すでにブルーシートが取り除かれ、V字型の中央部に大量の水が注がれていた。中央にいるのは重さ38トンのマッコウクジラと約30トンのコンクリートの重りだ。沈下作業は粛々と進んでいるようだ。そして午後3時をすぎ、和歌山県白浜町付近の沖合いで、作業が実施され「迷いクジラ」が海に放たれた。
【写真を見る】見守る作業員…重りをつけられたクジラ 海へ還る間近の船の様子
大阪の淀川河口付近に現れ、13日に死んでいることが確認されたマッコウクジラ。19日未明(午前4時45分ごろ)夜明け前の中、作業船(バージ船)に載せられて、大阪港を出航し紀伊水道沖に向かいました。クジラには重さ4トンのコンクリートブロック8個、約30トンあまりの重りがつけられていて、作業船の底を開いて、海に沈下させる方法が採用されました。 このあと作業船は現場に一定時間とどまって、浮き上がってこないかなどの確認を行って、作業は終了します。
クジラがわたしたちに残したもの
国立科学博物館の田島木綿子さんによりますと、きのう学術調査は20人で約3時間行われたと言います。その結果、マッコウクジラは体長約15m 体重38トン、大人のオスで外傷はなく、病気の有無はわかりませんでした。 採取したものとして、「クジラの歯」や「皮膚」「筋肉」「皮下脂肪」「腎臓」でDNAや環境汚染物質の研究にまわります。 また、胃の内容物として残っていた「イカのくちばし」や寄生虫なども学術調査に使われていきます。 いっぽう、希少なものとされる龍涎香(りゅうぜんこう)は見つかりませんでした。龍涎香はマッコウクジラの体内に稀に発生する結石で、珍しい香りが古くから珍重されたということです。