広がる「SAR衛星」活用 550キロ上空から地盤「1ミリ」の浮き沈み観測も

一方の人がレンズをのぞき、もう一方が大きな物差しを立てている光景。誰もが街中で目にしたことがある「測量」だ。

インフラや高層ビルの建設など地下を掘る工事現場では、測量は周辺の地盤への影響を調べるため必ず行う必要がある。この作業は少なくとも週1回、2人での作業は半日ほどかかる上、測定できる場所は“ピンポイント”。人手不足が深刻な建設現場で大きな負担となっている。

この課題解決のため、清水建設が活用を始めたのがSAR衛星だ。SAR衛星は地上およそ550キロの高さから観測する。地上およそ30センチ四方単位で観測でき、地盤のわずかな変動を「ミリ単位」で捉えることができる

衛星を活用した測量は広い範囲の観測が可能となり、地盤の変化を面的に把握できる。その上、人が立ち入れない危険な場所や、私有地など敷地内に入ることが難しい場所でも変化を把握できるという。

Synspectiveの観測データ 赤の観測ポイントが「沈下」を示す

さらに、大地震が発生した際、清水建設では地震発生地域の建物の持ち主に被害状況を電話などで確認したり、現場での被害状況の調査を行うことが大きな負担となっていた。しかし、SAR衛星を活用すれば、人が現地に入る前でも、広い範囲の被害状況を短時間で把握できる可能性がある。

一方、軍事・防衛の領域でも活用が進む。防衛面ではSAR衛星は、昼夜や天候を問わず、敵の部隊や施設、艦艇などの動向を把握する重要な手段となっている。

今年2月、防衛省は、防衛省として初めてとなる大規模な観測衛星網を整備するため、およそ2800億円規模の契約を結ぶなど、安全保障上における重要性は増すばかりだ。