AIが自動運転の性能を引き上げる

会場には、モビリティ技術からロボット、事故のない街を作るためのインフラなど、さまざまな技術が公開された。その一つが、開発中の自動運転技術だ。

トヨタグループでは、1990年代後半から自動運転技術の研究を進め、2010年代から公道試験などを実施してきた。ただ、当時はルールベースでの制御が中心だった。

ルールベースとは、あらかじめ設定されたルールに基づいて判断を行う自動システムのことで、ルールの設定や課題の解析などはエンジニアが手作業で行っていた。

それが、生成AIの一種と言える大規模言語モデル(LLM)が劇的に進化した2023年頃から、自動運転技術もLLMを中心とした開発に進化した。その結果、AIが大量のデータを取得して学習することが可能になり、自動運転技術は飛躍的に向上している。

開発リーダーの黒田龍介さんは、AIの活用を次のように解説する。

「私たちは自動車に搭載するAIを使った自動運転技術と、この技術をいかに継続的に成長させて、改善させていくかといった開発環境を両輪で作っています。開発環境にもAIを使っていて、AIが自動運転の性能を引き上げています」

自動運転技術の開発リーダー 黒田龍介さん

AIによる開発プロセスでは、ユーザーの車で実際に発生している課題や、ヒヤッとした場面などのデータをクラウドに吸い上げ、自動で解析する。その際に、どの課題から解決するのかについて優先順位をつけて、その課題に似たデータを集め、データセットを作成。これらのデータをAIに学習させて、解決策をシミュレーションする。このサイクルを高速かつ高性能で回すことで、自動運転システムの性能を上げている。

また、集まった膨大なデータの中から、本当に必要なデータをAIによって自然言語で呼び出すこともできる。例えば「animal on road」と入力すると、最近北海道でデータが収集されたばかりの「キツネが車の前方を歩いている映像」が出てくる。

ただ、課題に対処するために必要なデータを、車から収集するだけで全て賄うことは難しい。そこで、事故に至る直前のシーンなどの動画をAIで生成して、シミュレーションすることも可能だ。

黒田さんは自動運転技術の開発について「人間が方向性や戦略を決めて、システムが自動で技術を賢くしてくれることを目指しています」と説明した。