(ブルームバーグ):スウェーデンの自動車メーカー、ボルボ・カーに米国での事業継続を認める異例の措置は、トランプ政権による単なる同社救済ではない。中国資本が支配する企業が世界で最も魅力的な自動車市場に参入する道を開く可能性がある。
浙江吉利控股集団が株式の過半を保有するボルボは5月下旬、米商務省から「特定認可」を取得したと発表。これにより、バイデン前政権時代の規制を回避し、インターネットやクラウドサーバー、他の車両と通信可能な乗用車の販売を継続できるようになった。
いわゆるコネクテッドカー規制を巡るこの突破口は、中国最大の電気自動車(EV)メーカー、比亜迪(BYD)と競合するEVブランドを傘下に置く吉利にとっても、米市場により直接的な足場を築く現実的な道筋を示している。競合各社もそれぞれ適用除外を求めるべきであり、米議会による新たな締め出しの動きをかわす創意工夫を模索すべきだ。
米自動車メーカーやその政治的支援者からの反発は強いものの、最近の調査では、乗ったことがない中国車に関心を示す米国の消費者が若年層を中心にかなりいることが分かっている。コネクテッドカー市場の拡大が見込まれる中で、これは重要な意味を持つ。

新規参入を目指す企業は依然として、バイデン前政権時代に導入された2つの規制の対象となる。一つは100%の関税、もう一つは中国企業が開発または支配するソフトウエアやハードウエアシステムに対する国家安全保障上の禁止措置だ。
今回の判断は、ボルボに後者の要件を回避することを認めるとともに、吉利にも展望を与える。サウスカロライナ州チャールストン近郊にあるボルボの工場では現在、共通プラットフォームを採用するスポーツタイプ多目的車(SUV)「EX90」「ポールスター3」を生産している。
コネクテッドカーの販売が認められたことから、吉利が別途、適用除外を申請する場合、同社の米国ブランド車と同じソフトウエアとハードウエア、プラットフォームを採用する車両を販売すると主張すれば、説得力を持つ可能性がある。
ボルボのホーカン・サムエルソン最高経営責任者(CEO)は今年4月、さらなる生産余力を持つ同工場を吉利車の生産にも活用できると述べていた。

ボルボの事例は、競合他社が別の形で追随する余地も生み出した。アリックスパートナーズ・アジアの自動車コンサルティング部門責任者で、元フォード幹部のスティーブン・ダイヤー氏は、中国資本から独立した事業体を設立したり、国家安全保障上の懸念への適合を確認する技術監査を受け入れたりすることで、今後さらに多くの企業が適用除外を申請する可能性が高いと筆者に語った。
前者を実現する最良の手本を探すなら、中国系の動画共有アプリ「TikTok」を見ればいい。北京に本拠を置く親会社の字節跳動(バイトダンス)は1月、オラクル主導の国際投資家グループと合意し、新たな米合弁会社を設立した。
選択肢の一つとして、中国資本を排除するか、少数出資のみにとどめた企業を設立する方法が考えられる。バイトダンスは米国事業の19.9%に出資している。その企業が中国発のテクノロジーを再開発・改良する権利を取得し、米国の規制や国家安全保障基準に適合させる形だ。
熾烈(しれつ)な国内競争による価格下落に直面する中国自動車メーカーは、同様の取り決めの確保を目指すべきだ。力を貸してくれる向きは多いだろう。生活費の急上昇に苦しむ米国の消費者は、中国車に対し柔軟な姿勢を示している。

自動車サービス・技術企業コックス・オートモーティブが2月に実施した調査では、米国のドライバーの約40%が中国ブランドを検討する可能性について「極めて高い」または「非常に高い」と回答した。
予算重視のZ世代ではその割合が69%に達した。企業の合併・買収(M&A)に助言するデーブ・キャンティン・グループが昨年夏に実施した調査でも同様の傾向が確認された。米国での新車価格は平均5万ドル(約800万円)で、わずかな節約の可能性でも関心を示す人が多かった。
トランプ政権はボルボへの適用除外について理由を説明していないが、同社が13億ドルを投資し、2000人の雇用を創出したサウスカロライナ州の工場が一因だったことは間違いないだろう。
トランプ大統領は、中国企業についても工場を建設し、現地で雇用を生み出すのであれば歓迎すると述べており、この見解は他の共和党議員とは一致していない。
もっとも、2010年にフォード・モーターから吉利が買収したボルボの勝利によって、中国系企業を排除しようとする動きが終わるわけではない。
民主、共和両党の議員は現在、現行のコネクテッドカー禁止措置を法律として明文化し、将来の政権が容易に撤回できないようにするため協力している。同じような法案が最近、2本提出された。
しかし、TikTokの取引が示したように、商業的な利益が十分に大きければ、最も解決困難に見える法的、政治的対立でさえ解消できる。
乗用車輸出を始めた20年前から、中国の自動車メーカーは米市場への本格参入を夢見てきた。最近までその野望は実現不可能に思われた。しかし今や前例が築かれた。中国勢はこの好機を逃さないよう速やかに行動すべきだ。
(ジュリアナ・リウ氏はブルームバーグ・オピニオンのアジア担当コラムニストで、企業戦略と経営をテーマに執筆しています。以前はCNNでアジア担当シニアビジネス編集者を務めたほか、BBCニュースとロイター通信の記者として働いていました。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:The US Has Opened Wide to Chinese Cars: Juliana Liu (Correct)(抜粋)
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