日本における取り組み

日本では、個人情報の適正な取扱いと保護については、「個人情報保護法」が社会の変化に合わせて改正を重ねてきた。

個人情報の有用性に配慮しつつ適正な取扱いを確保するために事業者に必要な義務を課す一方で、本人を特定できないように加工した「匿名加工情報」、本人の特定を困難にした「仮名加工情報」など、データを安全に活用するための仕組みも整備されている。

さらに、本稿執筆時点(2026年5月)で審議がなされている個人情報保護法の改正案においては、AI開発等のためにデータを横断的に解析するニーズが高まっている現状を踏まえ、統計作成等、特定の個人との対応関係が排斥された一般的・汎用的な情報の分析結果の獲得と利用のみを目的とした取扱いを実施する場合に本人同意要件を緩和するための法改正が検討されている。

個人情報保護については監督機関も設置されており、「個人情報保護委員会」が法令違反への指導・勧告・命令などの法執行に対応するとともに、各種の相談に応じており、海外当局との協力も担っている。

AI統治については、日本の取り組みはガイドラインを軸とする柔軟な運用を選択してきた。総務省と経済産業省が公表した「AI事業者ガイドライン」(注12) は、AIの開発・提供・利用に関する包括的な指針として、国際的にも精緻な内容と評価されている。

2025年には「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(AI推進法・注13 )が制定され、研究開発から活用までの政策を一体的に進めるための法的な礎も整備されている。

一方、製品の安全性を確保するための規格(JIS)の世界では、AIマネジメントシステムに関する規格(JIS Q 42001・注14 )が整備されるなど、安心してAIを開発・運用するための「品質保証」の枠組みが整いつつある。「ものづくり」と「品質管理」を伝統として育んできた日本にとって、AIの安全と信頼を保証する仕組みづくりは本来得意とする領域でもある。