海外赴任先のタイで、過労などを苦に自ら命を絶った男性。母親は息子の死をめぐり、一時は対立した企業側と手を取り、再発防止に向けた取り組みを続けてきました。葛藤を抱えながらも、闘い続けた母親。その思いが一つの形になりました。

「元気だった息子を返して」最愛の息子が異国の地で過労自死

2024年11月。東京都内で開かれた過労死防止を考えるシンポジウムに登壇した富山市在住の上田直美さん。

上田直美さん
「会社には、従業員ひとりひとり大事な家族がいることを決して忘れないでほしい。元気だった息子を返して下さい」
「過労死がない未来、息子の命が生かされるよう、海外での働き方に関心を寄せていただければ幸いです」

最愛の息子‧優貴さんは5年前、赴任先のタイで過労などを苦に自ら命を絶ちました。

大学院で電気工学を学んだ優貴さん。“電気と環境をつなぐ仕事がしたい”という夢をふくらませ、2018年に旧日立造船(現:カナデビア)に入社しました。

2021年1月にはタイに渡航。現地のごみ焼却発電プラントで、自らの専門である電気設備関連の仕事を担いました。

しかし、着任から1か月あまりが経った後、専門外の業務を担当するよう命じられ、未経験の分野の仕事が積み重なりました。

上司からの叱責が増えたほか、時間外労働も急増します。