■2023年株式市場のキーワードは?
2023年株式市場のキーワードを考えてもらった。

――山口氏は「揺れ動く」だ。何が揺れ動くのか。
SMBC信託銀行 山口真弘氏:
今年は業績の下方修正が一巡するという期待感で前半に株価が底を打つと思っています。後半にかけては金融緩和が来るのではないかという期待感が株を支えていくことになると思います。その意味では(市場の)心理状態も中央銀行とのコミュニケーションで揺れ動くと思いますし、それが反映される株価に関しても揺れ動くことになると思っています。
――井出氏は「転換」。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
今年は去年とは逆の動きになるのではないかと考えています。例えば為替は円高方向、日銀も緩和縮小という方向に動きそうです。国内の賃上げも相当程度今年は期待できそうです。製造業の国内回帰といった動きも強まりそうです。ただ一つ一つ見ていくと、株価にとっては好材料と悪材料が入り混じっているので、日経平均の想定も一進一退、レンジ相場のようになるのではないかということです。
――前野氏は「綱引き 景気の後退VS利下げ観測」としている。
岡三アセットマネジメント 前野達志氏:
基本的に前半は景気後退を織り込むような形で下げて、後半は利下げ観測で上がるという話です。
――市場はこれまで散々パウエル議長に期待しながら裏切られるというのを繰り返してきて、まだパウエルプット(FRBが緩和姿勢で株式相場を下支えする)に期待するのか。
岡三アセットマネジメント 前野達志氏:
期待するというよりは経済活動、資本主義の世の中はすべて振り子だと思っているので、インフレも上がれば次は安定するというのが世の常だと思いますので、信じたいと思っています。
――小髙氏のキーワードは「検討されていないものこそリスク」。
野村証券 小髙貴久氏:
2022年の教訓として、予想していなかったインフレが市場を支配したという点も踏まえると、予想していなかったことこそがリスクだと思っています。今年も例えば年末までアメリカの利上げが続いてしまう。これも悪いリスクだと思います。台湾有事もある程度話題には出てきていますが、真剣には検討されていないと思います。検討されていないものこそ今年の市場を支配する要素が強いのかなと思います。
――同じような言葉を挙げたのが黒瀬氏で「未知との遭遇」だ。
りそなアセットマネジメント 黒瀬浩一氏:
皆さんは株式市場で景気、業績、金融政策と見ていますが、その外から想定外のものが来る。世界の秩序が変わっていてグローバル化時代の低インフレから反グローバル化時代のもう少し高いインフレに移行している。それは国際政治にも言えて、米中の対立やロシア・ウクライナ戦争もそうですし、ガスの需給などいろいろなものに関係してくると思います。
――インフレが高止まりして金利が一定の高い水準にとどまった時に、株式市場はそれを跳ね返して上がっていく力はあるのか。
野村証券 小髙貴久氏:
条件付きであると思います。例えば昨年は円安が起きて、それからエネルギー価格の上昇が起きてインフレが進んでいたと思いますが、これが価格転嫁でき収益につなげられるなら業績の上方修正につながり、株は上がると思います。
――そういう好循環が起きるような経済に日本がなっていけるかが、今問われている。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
まさにそうです。この春は賃上げがだいぶ期待できますが、来年、再来年と3%もしくは5%の賃上げが続くという期待が持てるかどうか。賃上げ以外にも人材投資といったもう少し長い目で見て日本をもしくは日本の企業を良くしていく、世の中の役に立つような投資を先行的にできるような社会もしくはそういう環境を整えることが大事なのでしょう。
■日銀の政策転換の影響は?
最後に日銀の政策が与える影響について聞きたい。
――日銀の政策転換が本当に始まったら影響は甚大ではないか。
SMBC信託銀行 山口真弘氏:
政策転換という言葉でどこまでやるかということになると思うのですが、例えば今回やった10年国債利回りの変動許容幅の拡大というのはまだあり得ると思います。それに連動するような形でいわゆるゼロ金利政策の解除というものはやるのだろうと思いますが、ゼロ金利政策の解除の後にプラス金利まで短期金利を持っていくことはおそらくないのではないかな。

――黒瀬氏は未知との遭遇と言ったが、日本では文字通りインフレは未知の世界だ。日銀が言っているように一時的で終わるのか。インフレと賃上げが持続的に回っていくような世の中になっていった時にはレジームチェンジ(金融政策の転換)ではないか。
りそなアセットマネジメント 黒瀬浩一氏:
そうなったらレジームチェンジが必要になると思いますが、そのタイミングは今年ではないと思います。今年はむしろ世界的に前半の景気は厳しいでしょう。日本にとっても少し厳しくなるでしょう。日本は経常収支が赤字で、少し前まで円安が止まりにくかった。止めるためには外貨準備を売って原資を調達しないといけなかった。この状態はアジアの通貨危機と同じではないかということから、海外の一部には日本発のアジアの通貨危機と言っている人さえいます。この解決策が日銀による金利の引き上げではないというのは明確にしておく必要があると思います。
今年は難題山積で株式市場にとっても厳しい年になりそうな予感がする。果たしてどうなるか。いい方向に予想が外れればいいのだが。また2024年に答え合わせをしたい。
(BS-TBS『Bizスクエア』 1月7日放送より)