ウクライナ戦争、世界的なインフレ、相次ぐ利上げと激動の1年を経て、今年の日経平均株価はどう動くのか。りそなアセットマネジメントの黒瀬浩一氏、SMBC信託銀行の山口真弘氏、ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏、野村証券の小髙貴久氏、岡三アセットマネジメントの前野達志氏、5人の投資のプロたちが今年の株価の行方を占う。

■卯年の格言は「跳ねる」 年末3万円台に乗るか


まず2022年の株価を見ておく。1月5日に2万9332円という高値を記録したが、その後はウクライナ戦争などもあって下げ、最安値は3月9日の2万4717円だった。年末は2万6094円で、年間で二千数百円の値下がりで終わっている。値下がりで終わるのは4年ぶりとなった。


ゲストの予想を振り返ると年末の終値はかなり外した感がある。唯一2万円台を予想していたのが山口氏で2万9000円だが、遠い数字だ。


SMBC信託銀行 投資調査部長 山口真弘氏:
1年前の予想では、アメリカのインフレの落ち着きどころがポイントになるとしていました。それが思ったより高止まりするという話はリスク要因としてはしていましたが、予想をはるかに上回る水準になってしまっているということです。余計だったのは12月の日銀の政策調整です。これで株がドカッと下がってしまい、年初から見て下げて終わるという予想を立てていたのですが、その下げ幅が想定以上に大きくなってしまいました。

――大きく外したのが前野氏と井出氏の3万2000円だ。


岡三アセットマネジメント シニア・ファンドマネージャー 前野達志氏:
アメリカの経済を見るとそれほど悪くはなかったのですが、これだけの急激な利上げを想定できなかったということだと思っています。もう1点はここまでずっと超低金利、イージーマネーという話があったと思うのですが、簡単なお金の時代が終わったことの影響を過小評価してしまったと思っています。

――井出氏は、高値は3万3000円まで行くと言っていたが、3万円には一度も届かなかった。


ニッセイ基礎研究所 チーフ株式ストラテジスト 井出真吾氏:
リスク要因として考えていたことが次々と顕在化してしまったという感じです。インフレが加速した結果、FRB(米連邦準備制度理事会)は急ピッチな利上げを何度も繰り返すことになったり、他にもウクライナや、安倍氏銃撃事件で岸田政権の支持率が下がってしまったり。ダメ押しが日銀です。これで大きく見通しと外れて違う結果になったと思います。


卯年の相場の格言は「跳ねる」だ。歴史的に見ると値上がりしている年が多い。前回の2011年は17%下げたが、これは東日本大震災、福島原発事故といった特殊要因があった。今年の予想はどうか。


予想グラフの形はさまざまだが、下は2万4000~5000円、上は3万円台にいくという人といかないという人と、若干のばらつきが出た。

――一番強気に見ているのが前野氏で、年末3万1,000円までいくと。右肩上がりに上がっていくのか。

岡三アセットマネジメント 前野達志氏:
前半はやや弱めと考えています。後半はある程度景気も悪くなるため、インフレも落ち着いてくるでしょう。そうなるとマーケットの方は来年以降の利下げを織り込む形で株式市場は上がっていくと。アメリカ株に追随するような形で日本株も上がっていくと考えています。

――小髙氏は高値は3万1000円で年末には3万円と予想している。


野村証券 エクイティ・マーケット・ストラテジスト 小髙貴久氏:
今年の前半はアメリカの利上げがどこまで行くのか、さらに引き上げられるのかという懸念材料もありますし、日本ももっと物価が上がっていって日銀の金融政策の修正などもあるのではないかと。一方で後半になってくると利上げなども一巡して業績が回復するという見方なども出てきて、3万円に戻っていくのではないかと思っています。大体年の半ばぐらいで今年のアメリカの利上げの決着がつくと思うので、そこからマーケットの見方も大きく変わっていくと思います。

――山口氏は高値は3万1000円まで行くが、年末は2万8000円ぐらいではないかと。

SMBC信託銀行 山口真弘氏:
昨年の秋口ぐらいから日本株市場は業績の下方修正が進んできていて、その流れがまだしばらく続くと思っています。2万5000円から2万8000円ぐらいのレンジで上下するようなイメージで前半は進んでいくだろうと思います。

――3万円はもう今年は無理だと言っているのが井出氏と黒瀬氏だ。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
春先ぐらいまでにFRBの利上げ打ち止めは確実だというのが見えてきて、市場心理が和らいで一旦強含む展開があると思っています。ただ、先にアメリカの景気が腰折れしてしまったら元も子もありません。いずれにせよ、アメリカの景気は年央にかけて今よりは悪くなっていくことは避けようがないでしょうから、景気後退と円高という日本株にとってダブルパンチが夏場にやってくると思います。

――黒瀬氏も今年も引き続きあまりいい年ではないという見方だ。


りそなアセットマネジメント チーフ・マーケットストラテジスト 黒瀬浩一氏:
景気、企業業績と金利との綱引きが2022年だったと思います。今年もその状態が続きます。前半はアメリカの景気後退が見えてくると思います。金融緩和期待から上がりますが、しかしながらそれもスッキリできないということで、株価もスッキリしない展開を想定しています。