愛媛県松山市の坊っちゃんスタジアム

ベースボールを愛した俳人・正岡子規の古里、松山の1年は、今年もヤクルトナインの自主トレで始まった。
「草茂みベースボールの道白し」
句碑を正面に右を仰ぎ見れば、坊っちゃんスタジアムの向こうには澄み切った青空がこれでもかと広がっている。

ヤクルトナインの松山自主トレ
かつては広澤、池山が中心となって「旧松山市営球場」で始まったが、その後は2000年に移転され開場した坊っちゃんスタジアムがその舞台。真中、宮本、川端らが技を磨き、さらには宮出、岩村といった地元勢も白い息を吐きながら初春の青空にアーチをかけてきた。

総勢15人が参加

そして2023年が明けて10日目、昨シーズン、セ・リーグ2連覇を果たしたヤクルトの野手組が始動。球団の垣根を越えて合流した選手も含め、総勢15人が参加している。

その核となっているのが、ミスタートリプルスリー「山田哲人」だ。過去3度の3割、30本、30盗塁という偉業に4度目を加えるには、「30歳」の今年はこれ以上ないタイミングと思われるが、「年末年始はゆっくりして、トレーニングはしていない」とあくまでも自然体だ。それでも「チームとしては3連覇、日本一奪還を掲げると思うので、それに向けてしっかりチームをまとめていければ」と3年目を迎えるキャプテンとしての顔も忘れない。

ただその前に、日本球界にとって今年は特別な年。3月のWBCを前に、山田への周囲の期待値は否が応にも高まる。2017年の前回大会では、1番サードで日本の銅メダルに貢献すると、2021年の東京オリンピックでは全5試合に出場、チームトップの7打点をマーク。日本の金メダルに貢献し、大会MVPにも輝いた。

「WBCに選ばれるかは分からないが、今年は練習の『量』を例年よりも増やしたい気持ちがあるので、WBCに選んでもらっても調整は問題ないと思う」とシーズン開幕から1か月早い大舞台にも準備にぬかりはない。

ただ山田には過去の栄光や実績にあぐらをかく様子は微塵もない。
「これまでの活躍は過去のことなので、そこは何も思っていません。選ばれた時には一生懸命に頑張りたい」

大舞台まで約2か月。ただその先にも長いペナントレースが待っている。
「チームとしても個人としても、しっかり成績を残しいい年にしたい」と、山田は松山で心と体を整えていく。

「毎年この愛媛から野球をスタートしているので、新鮮な気持ちできょうもトレーニング出来ているし、頑張ろうという気持になるので、しっかりトレーニングして愛媛に恩返しができるようなシーズンにしたい」

初日からみっちり5時間の練習に汗を流した山田哲人らヤクルトナイン。

練習後は松山市の城北地区、静かな山間に位置する権現温泉で疲れを癒した。

地元住民にも人気のアルカリ性単純温泉の湯は少しぬめりがあり、効能も多岐に渡るがなにより一番の特徴は「温かく冷めにくい」こと。
球団史上初のリーグ3連覇、そして日本一奪還へヤクルトナインは今、体の芯から英気を養っている。