能登半島地震から2年以上が経った今も、林業の再建には多くの課題が残っています。
なりわいが奪われた山で、100年後の未来へ森を繋ごうとする担い手たちの思いを取材しました。
チェーンソーの音が響くのは、能登町十郎原の山林。
木材の切り出しではなく、林道を復旧するために土砂崩れで流れてきた木の伐採をしている現場です。
この現場に向かう林道はいまだに、寸断されたままとなっています。
●能登森林組合・古坊勝利さん
「ここが林道です。山がずっと崩落して林道にずっと(土砂が)のっています」
「ここを通すために木の伐採をしてます」
「先ほどの林道がずっと続いているんですけど地震以降通れない状態です」
能登森林組合・事業部長の古坊勝利さんは、およそ40年にわたって能登の林業に携わってきました。

●能登森林組合・古坊勝利さん
「生産量はかなり減ってきている。本来のなりわいの仕事ができていない状況」
組合の仕事には木の伐採だけでなく土木工事なども含まれますが、輪島市・珠洲市の林業従事者は、地震から2年以上が経った今も、いまだに災害復旧工事にあたっていて本来の木材生産ができない状況にあります。
●能登森林組合・古坊勝利さん
「人が不足しているという状況」
「早く復旧して本来の仕事に戻りたい」

能登森林組合の職員の内、伐採にあたる技術職員の数は年々減少していて、被災した組合員の中には、組合を離れざるを得なかった人たちもいます。

奥能登2市2町を管轄する組合の2025年度の木材生産量は、およそ1万2000立方メートルで、地震前と比べて半分以下に落ち込んでいます。
生産量を取り戻す上での喫緊の課題は、人手不足だけではありません。
被災地では、林道の復旧の遅れが林業従事者のなりわい再建の大きな足かせとなっています。

●能登森林組合・古坊勝利さん
「ここ道だった」
2024年8月には、奥の方まで続いていた林道に続く道。
現在は、その入り口に80メートル以上にわたって土砂が流れ込み、伐採地まで行くことができなくなっています。
県によりますと能登半島地震・奥能登豪雨で被災した林道はおよそ2800箇所。
現在、奥能登2市2町では林道の復旧工事が行われていますが、発注しても入札に応じる業者が現れない「入札不調」が課題となっています。
2025年度、奥能登すべての自治体で入札不調が発生していました。
輪島市では、7件中4件で復旧に当たる業者が見つからない結果になったということです。
自治体の担当者によりますと「地元の技術者が足りない」「道路や河川が優先され、林道にまで業者がまわってこない」ことなどが要因と考えられています。

●能登森林組合・古坊勝利さん
「(林道は)目に見えないところなので、やはり目に見えるところ優先で、どうしても後回しになっている」
生活インフラや住宅が優先されることは理解できるものの目の前に広がるのは、土砂に流されて売り物にならない木や寸断されたままの林道。
●能登森林組合・古坊勝利さん
「50年60年経っている木で、これから切って出そうかというときにこんな状態になっている。二束三文でお金にならない木になってしまっている」
「立っているのは少しは(お金に)なるのかな、でも切り出しに(いけない)」
このような状況の中、被災地の林業を盛り上げようと奮闘しているのが、金沢市の木材販売会社「フルタニランバー」の古谷隆明(ふるたに・たかあき)社長です。

その事業は、木材販売にとどまりません。
能登地方で育つ針葉樹県木の「能登ヒバ」=アテを使った商品開発を手掛け、これまでに、ギターやドラムなど30種類以上の楽器をつくりました。

これらはATENOTE(アテノオト)というブランドで展開し、一流ミュージシャンからも関心を集めています。
そして、こんな商品もー
●古谷隆明社長
「これヒバのベッドですね抗菌、リラックス効果があるので 入眠にもいいのかなと思います」

これまで主に建築材として使われてきた能登ヒバ。
その優れた品質を活かして日用品にも用途を広げ、木材としての付加価値をつける試みです。
そこには、林業を未来へつなぎたいという強い想いがありました。
●古谷隆明社長
「一番は山を守るためにやってるというのがあって。
目の見えるところに使うことで、高付加価値なものにつながって、丸太の価格が上がってくる。上がってくれば、木を切る人の待遇改善につながる。担い手不足の解消にもつながってくると思っています」
いま動き出さなければいけないー。
能登の林業の現状を目にした古谷さんが語る理由とは。
●古谷隆明社長
「木が採れるのは100年後」
「自分の子供、孫、その下の世代かもしれない 本当に大事にしないといけない」
能登の森を未来へ―。
能登森林組合も100年後を見据え、優れた木をあえて切らずに後世に残すという、新たな試みを始めています。

●能登森林組合・古坊勝利さん
「白いペンキを塗っているところが『100年木』として後世まで残すことを考えています」
「七尾以北にしかアテ(能登ヒバ)はない」
「これを絶やすことはできない」
度重なる災害によりなりわいが奪われたままの、奥能登の林業。
100年後に豊かな森を残すために山の担い手たちは、きょうも森と向き合い、守り続けています。














