禁止されている「スーパースーツ」の着用も可 「人間の限界追求」か「ビジネス」か?
高柳キャスター:
なぜこうした大会が今回開催されたのでしょうか?

JNNロサンゼルス支局 小川健太記者:
大会CEOのマックス・マーティン氏は、その目的として「従来のスポーツの枠組みにとらわれず、科学とイノベーションを取り入れて人間の限界を追求する」と説明しています。
その意味では、ドーピングだけでなく、現在は禁止されている競泳の「スーパースーツ」の着用も認められています。
2008年の北京五輪で世界新記録を連発し、その後禁止された「レーザー・レーサー」に使用された素材も、科学の進歩の賜物だとして着用が認められました。
そして、この大会の“本当の目的”とも言えるのが「ビジネス」的な側面です。
今、アメリカを中心に科学の進歩を背景とし、長寿やアンチエイジングの市場が急速に拡大しています。
こうした中で、大会を運営する企業はサプリや薬品の開発・販売も手がけていて、今回参加した選手の生体データを今後の商品開発に活用する方針で、本当の狙いはここにあると感じます。
一方で、参加する選手たちにとっては「厳しい懐事情」という現実もあります。
アメリカの水泳協会によると、オリンピックを目指すトップクラスの選手でも年収は350万円ほどというデータがあります。
ここから遠征やコーチの費用なども自己負担になるため、オリンピックで脚光を浴びても、普段の生活はかなり苦しいのが実情のようです。
実際、参加選手の一人も「家族のためにも、参加しない理由はなかった」と本音を漏らしています。
高柳キャスター:
ウルヴェさんは、スポーツに携わる者として、この大会を率直にどのように感じますか?

スポーツ心理学者(博士) 田中ウルヴェ京さん:
色々な側面から批判する理由はありますが、一番大きな理由としては「人間の限界」という言葉の意味です。
怪我や老化、努力でどうにもならないことがある中で、どこまで自分はできるのかと挑戦し、人間の限界を知り、達成感や自己効力感を得ることができます。
薬の利用や、科学的なトレーニングで良いとされていることをするのが、果たして20〜30年後に繋がるのだろうか。と考えます。それ以外にも、選手データの意味や安全性といった問題はありますが、選手のお金の問題は別だと思います。
井上貴博キャスター:
大会側としては、人間の限界を超えていくためのデータを取る必要性や、医師のもとで行われているという安全性もあるという主張だと思いますが、倫理観だけでは突破できない話題であると思います。
やむにやまれず、参加するしかない状況に追いやられている選手もいるという現状があると、この大会に参加しなくても、しっかりと稼げる環境をまず作る必要があるのかもしれません。
田中ウルヴェ京さん:
何のための稼ぎかということですよね。例えば、「子ども達が運動できるような環境を整えたりする」などの社会貢献になりますが、それは一人の選手が何度も世界一になったとしても、それ自体がすぐにお金になるわけではありません。
選手の育成プロセスの中で、お金になるものは様々あり、いかに心と体の健康をシステム化できるかの方が、国の政策としても環境面でも、良いあり方になると思います。それは簡単に可視化できるものではないからこそ、その是非を問わなければいけないと思います。














