大量出没の理由、凶作に加えて…
2022年3月、札幌市西区三角山で見つかったクマの冬眠穴です。
三角山は札幌の中心部からも近く、高さ311メートルの小さな山です。手軽さから、地元の小学生の遠足やトレッキングのコースとして親しまれています。すぐ近くには、住宅街が広がる場所です。
巣穴があったのは山奥ではなく、住宅街からわずか500メートルの位置でした。
クマが出産し、子どもを育てる場所も、山奥から住宅地へと近づいているのです。
この冬眠穴が見つかった当時の取材で、酪農学園大学の佐藤喜和教授は「人里の近くに定着するようになったクマは、人との触れ合いが多いので人慣れをする」と指摘していました。
本来、人を恐れ距離をとって暮らすはずのクマが、近年は住宅地の近くに 「定着」 してしまうようになりました。
EnVision環境保全事務所の早稲田宏一さんは、この状態に 「凶作」 が組み合わさったことで、大量出没が起きたのではないかと見ています。
そこで札幌市では、住宅地の近くに定着しているクマの対策に着目しています。
そのためには、「クマの性別」がポイントになります。
クマの性別による違い
クマは性別によって、暮らすエリアの広さに違いが出てきます。
オスは時には数十キロに及ぶ、非常に広い範囲を移動します。これまでに、札幌・小樽・江別など、自治体をまたいで移動した事例も確認されています。
早稲田さんは、天気予報になぞらえていえば、広い範囲を移動する若いオスは「台風」のようなものだと言います。
台風は生活に影響を及ぼしますが、何か月も続くものではなく一過性の現象です。ある程度の予想はできますが、急に進路を変えることもよくあります。
移動中のオスのクマも、その地域に長く定着しているわけではなく、いわば「通りすがり」のクマです。
クマは緑地や川沿いを移動することが多いので、専門家らはある程度ルートを予測できることもありますが、台風と同様に、クマの個性や周囲の状況によって、ときに大きく方向を変えます。
一方メスは、オスのように数十キロメートル移動するようなことはなく、たいていは5キロメートル四方くらいの、おおよそ同じエリアにとどまると言われています。生まれ育った場所の近くで、自分も冬眠穴を作り、子どもを産み育てます。
そこで札幌市では、特に 住宅地近くに定着している「メスのクマ」 に対して、継続的に注意すべきだと考えています。
子どもは母グマの行動から生き方を学んでいくので、親子が繰り返し住宅地に来る状態を放置すると、その子どもたちも出没を繰り返すリスクがあります。
「メスのクマ」に注目するのは、対母グマだけでなく、次世代のクマたちへの対策も兼ねているのです。
2026年、気を付けるべきメスのクマはどのあたりにいるのか。
前回の記事でお伝えした根拠をもとに、いよいよ次回からの記事でお伝えします。
取材協力:札幌市環境共生担当課・坂田一人さん、清尾崇さん、NPO法人EnVision環境保全事務所・早稲田宏一さん、中村秀次さん
天気表現の監修協力:HBCウェザーセンター・近藤肇気象予報士
文:Sitakke編集部IKU
ドキュメンタリー映画『劇場版 クマと民主主義』監督。2018年にHBCに入社し、報道記者として取材した島牧村をきっかけに、人にできるクマ対策はたくさんの選択肢があることを知る。「Sitakke」や「クマここ」の運営、放送やイベントなどを通じて取材・発信に取り組んでいる。
※掲載の内容は取材時(2026年3~4月)の情報に基づきます。














