暴力問題が後を絶たない相撲協会は2018年に「暴力禁止規定」を発表している。その中で、「親方本人が暴力を振るった場合、力士以上に厳しい処分となる」と定めた。もろにこれに当たる中川親方との比較について、藤島広報部長は「中川親方の場合は長期的に暴力、暴言が続いていた。しかも、被害者側からの報告で分かった。今回は本人からの申告の上、一過性のものと判断した」と答え、明らかに違うと説明した。

一方の元宮城野親方の方は自らの暴力ではなかったが、部屋は事実上の閉鎖に追い込まれた。この事案と比べた場合には、「(宮城野親方は弟子の行為を)見過ごしていた期間が長期に続いた。自ら報告もしなかったし、第三者が介入して、事実関係の解明を妨害する恐れもあった」と話した。

角界では不祥事に対し、1度目は寛大に扱う傾向が昔から続く。そこが元宮城野親方との違いとみられる。しかも今回は立場上、酒席で許されざる行為に及んだ弟子への「指導」の意味合いもあったとされる。確かに自ら申し出たことも、これまでの問題行動の事案とは違う気がする。それでも、「暴力」で対処に至った結果は許されるべきではない。力士を導く親方、部屋を預かる師匠として、厳しく処分されるべきだと思う。

問題発覚後、協会は同親方に春場所での休場の処置は取ったが、大阪の宿舎での指導は続けさせていた。世間一般なら、せめて処分が出るまでは謹慎処分等にし、稽古場での指導等は控えさせるべきではなかったか。これでは始めから「情状酌量」が約束されていたようにも見えてしまう。

また、今の時代はセクハラ問題への視点も厳しい。不祥事のきっかけを作った伯乃富士の行為は、見方によっては犯罪行為にも取られる可能性がある。泥酔していたとはいえ、酒席のトラブルは初めてではない、と聞く。厳重注意だけで済ませてよいものなのか。新入幕場所でいきなり千秋楽まで優勝争いに加わり、敢闘、技能の両賞を受賞。「令和の怪物」の異名も持つ有望力士だけに、きちんと厳しい処分を与え、再出発させた方が本人の将来のためにも良かったような気はしている。

伯乃富士が元々は「伯桜鵬」のしこ名で土俵に上がっており、宮城野部屋所属の白鵬の弟子だったことも、この問題の見方を複雑にしている。モンゴル出身の2横綱はかたや史上最多の45回優勝。一方はけがや病気で序二段まで転落してから大関に復活、そして横綱まで上り詰めた。2人はこれも暴力で引退した同じモンゴル出身の横綱日馬富士を交え、現役時代から様々な因縁がある。今回の協会の言い分は理解できる部分が多いとは言え、それならば白鵬の時の処分が厳しすぎたのではないか、との思いは残る。

3月の役員改選で再選され、実質の6期目を迎えた八角理事長体制は10年を越えた。連日、大入りが続く「令和の大相撲人気」はとどまる気配をみせない。だが、華やかな勝負を期待するファンにとって、力士、親方の土俵外の振る舞いは「優しく、誠実で、応援出来るものを」と願っている。特に不祥事には素早く、多くのファンが納得できる対応を求めたい。耳の痛い批判や忠告こそ、本場所の取組をより楽しんでもらえる「良薬」と捉えて、協会幹部はかじ取りに当たって欲しい。

(竹園隆浩/スポーツライター)