想像をすることしかできないこと、あるいは想像をすることさえも難しいことが、これまでにもこの先にも果てることなく出てくるのだと思います。からだひとつで生きているわたしたちには、むしろ自分自身の実感として知ること、体験できることの方がきっとずっと少ない。それでも自分に見えていないものがあるということや、分かり合えなさを引き受けて書いてくしかないと思っています。

『彼方の幽霊」の制作の動機のひとつは、生きてゆくための勇気となることでした。いつかの自分にとって、あるいは、ここにある詩にいつか出会う誰かにとって。それは、自分がここに在ってうれしいと思うものに対する気持ちでした。ほんとうには触れることができなくとも、その存在は、自分の手を握ってくれるような、そっと背中を押してくれるような、その体温が伝わってくるような心強さがあると信じています。自分には、その勇気によって生きることのできた時間が少なからずあり、その地続きの時間のなかで、ことばを見つけてゆくことができたと思うからです。

 他のどんな言葉よりも、詩のなかでだけ話せることが自分にはあること、それは 「They」という詩を書いたときに覚え、それから自分が詩を書くということの水源になっているものです。自分にもことばがあるということ、それをつよく感じられることは喜びでした。詩がここに在ってよかったです。自分が生きていくというそのことの側で出会うことができて。だからこそ、この先も自分は書いていこうと思います。

最後に、この詩集の宛名である彼方の幽霊たちへ、あなたが、わたしたちが、たとえ自分を表すことばを見つけられなくとも、何かを諦めたり、折り合いをつけていくことがあったとしても、クローゼットにいても、迷ったり、死にたくなったりしても、あなたの、わたしたちのなかにあるほんとうが損なわれることは決してありません。
いつか出会えますように、どうか良き日々を、そして良きパレードを。

成清朔

選考作品は「私家版」とよばれる書店などの流通に乗らない自費出版の形で著されたが、現在は出版社を通じて、書店などで手に入れられる。