取材を終えて

「1人の死刑囚にここまで寄り添い続ける弁護士を見たことがない」。私は日本で裁判員制度が始まった2009年から17年間、司法記者として取材を続けているが、黒原弁護士と奥本死刑囚ほどの深い絆を見たことがない。
私はこれまで5人の死刑囚と直接、対話をしてきた。その他にも死刑判決が出た様々な裁判を傍聴し、多くの弁護人の姿を目の当たりにした。親身になって支援を続ける弁護士は少なくないが、「死刑制度に反対し無罪を勝ち取ることが目的で、死刑囚本人の境遇やその後には興味がない」と断言する弁護士も実際には存在する。
刑の確定後、黒原さんは福岡拘置所の近くに新たな弁護士事務所を設けるなど、奥本死刑囚を全面的にバックアップしてきた。だが10年以上が経過した2025年、奥本死刑囚は自身が犯したその「罪の重さ」に耐えきれず、刑の早期執行を求める上申書を密かに作成した。関連書類の発送手続きをとったその日、たまたま別件で拘置所に立ち寄った黒原さんの悲しそうな表情を見て翻意し、配達を差し止めている。
16年前、宮崎市の警察署の面会室で出会って以来、2人は「伴走」を続けてきた。死刑執行の恐怖に怯える日々だが、だからこそ「命」に考えを巡らせ、互いに言葉を交わしてきた。険しい道のりであることは変わらない。それでも私は記者として彼らの「伴走」を見つめていきたいと思っている。
※この記事は、TBSテレビとYahoo!ニュースの共同連携企画をLINE NEWSに配信しています。

















