ことし5月のG7広島サミットでは、原爆が投下された地に核兵器保有国の首脳たちが訪れることになります。広島サミットに懸ける思いを被爆地選出の岸田文雄総理大臣に聞きました。

■自分自身、大きな責任を感じなければならない
Q.ロシアによるウクライナ侵略で、核兵器が使われる恐れが高まったタイミングで総理大臣の職にある、このめぐりあわせについて思うところはありますか?
岸田総理
「やはり核兵器が実際に使われるかもしれないリスクが高まっている時だからこそ、被爆地あるいは唯一の戦争被爆国の発信力が問われると思います。
そしてこういったリスクが高まっているときに被爆地、そして唯一の戦争被爆国の首相としてこの政治の世界にあるということ、これはある意味では、めぐりあわせかもしれません。自分自身、大きな責任を感じなければならないと思っています」

■世界の核軍縮不拡散の気運を再び広島から盛り上げる
Q.核兵器のない世界を目指すうえで、5月開催の広島サミットをどう位置付けますか?
岸田総理
「去年、NPT再検討会議をはじめ様々な核軍縮不拡散の会議がありました。そしてロシアによるウクライナ侵略などの情勢をみる中で世界的に核兵器のない世界を目指すという気運、雰囲気、みんなでがんばろうという雰囲気がだんだん盛り下がっているのではないか、こうした心配する声がどんどんと強くなっています。
やはり広島でサミットが行われる、世界中から注目を集めます。核兵器国のリーダーを始め、世界の主要国のリーダーが広島の地に足を運んで、ここからメッセージを発信するわけですから、その際に、もちろんサミットですから経済であったり地域情勢であったり環境問題であったりいろんな課題について議論しなければいけないわけですが、あわせて平和に対する思い、核兵器のない世界を目指す思いを被爆地から発信することによって世界の核軍縮不拡散の気運を再び広島から盛り上げる、こういったきっかけにすることができればと強く思っています」
■窮屈な日程 日本の思いを訴え、ぎりぎりまで調整
Q.各国首脳の被爆者との対話、原爆資料館の視察の実現を、議長国として約束できそうですか?
岸田総理
「世界のリーダーはじめあらゆる世代の方々に被爆の実相に触れてもらう、このことは核兵器のない世界を目指すうえで後押しになる大きな力になると信じていますので、実相に触れてもらうことは大事だと思います。
ただ、G7の日程は議長国が1人で決めるのではなくして各国の議論の積み重ねで日程を決めるということですので、これから本番ぎりぎりまで調整が続くということだと思います。日本の思いもしっかりと訴えながら、調整をしていきたいと思います」
Q.かつて岸田さんはアメリカのオバマ大統領(当時)を原爆資料館視察に導いた実績があるので、期待してよろしいでしょうか?
岸田総理
「先ほども言いました、今、歴史を画するような課題が山積しています。これすべてG7サミット2日間の日程の中で議論し消化していかなければいけない、その中にどんな現地での日程を組むのか、かなり窮屈な日程の調整になると思います。その中で最大限、被爆の実相に触れてもらうことの大切さ、日本の思い、これを訴えながらぎりぎりまで調整したいと思っています」
Q.総理の思いとしては当然実現させたいと?
岸田総理
「調整をいたします。議長であるからしてなおさら勝手なことは言えない。まとめなければいけない、この責任もしっかり感じながら日程を決定いたします」
■核兵器国をいかに核兵器禁止条約に近づけることができるか
Q.サミットの約半年後には核兵器禁止条約の第2回締約国会議があるが、オブザーバー参加することの検討は?
岸田総理
「核兵器禁止条約は核兵器のない世界を目指すうえで出口に当たるまさに重要な条約だと思います。ただ核兵器国は一か国も参加していない。核兵器国が変わらないと現実は変わらないわけですから、唯一の戦争被爆国である日本の役割は核兵器国をいかに核兵器禁止条約に近づけることができるかということだと思います。唯一の同盟国であるアメリカとの信頼のもとに核兵器国をどれだけ核兵器禁止条約に近づけることができるか、これが問われるのだと思っています。そのために具体的にどうするか、これを考えていきたいと思っています」