「不完全な僕には、これぐらいがちょうどいい」

転機は、2008年に骨董市で出会った「トイピアノ」です。トイピアノは、グランドピアノと比べて、コトコトと音が鳴ったりなど音程がずれているのが特徴で、秦さんは、不完全な音色を奏でるところに惹かれたと話します。

ある日、秦さんは何気なく実家にトイピアノを持ち帰りました。20年近く、疎遠な関係が続いていた日のことです。

トイピアノをひと目見た兄が、吸い寄せられるように鍵盤に触れ、即興でメロディを紡ぎ出したのです。驚く畑さんに、兄はポツリとこう語りました。

▼秦さんの兄
「これはおもちゃだから自分みたいに精神障害を患って不完全な人間にとっては本物のピアノよりもおもちゃのピアノのほうが気が楽だってリラックスして自分らしくできる」