2連覇を狙うHondaが自信の布陣で臨む。
23年最初の全国一決定戦であるニューイヤー駅伝は、ハイレベルの戦いが予想されている。前回優勝のHonda、2年前優勝の富士通、戦力充実が著しいトヨタ自動車、九州大会優勝の黒崎播磨が“4強”と言われている。そこに大迫傑(Nike・31)が“参画”するGMOインターネットグループも加わる勢いだ。
前回初優勝を達成したHondaは、伊藤達彦(24)と青木涼真(25)の2年連続日本代表コンビでトップ争いに浮上するプランだ。前回、中山顕(25)がトップに立った6区は、今回も重要区間と位置付けている。
世界を目指すHondaだからこそ
優勝後の1年でどんな変化がチームにあったのか。それを問われたHonda・小川智監督は次のように話した。
「何かを変えたりはないですね。いつもの通りに積み上げてきました。(それでも練習のタイムなどは)年々上がっています」
小山直城(26)は練習のレベルが上がっていることについて「今季は設定タイムが上がっていると実感していますし、ラスト1、2kmのフリーに設定したときのタイムの上がり方が、例年より上がっています」と話した。
それが当たり前のようにできるのが、今のHondaの強さだろう。
エースの伊藤は7月の世界陸上後に二度の故障があった。帰国後に足底に痛みが出て、東日本実業団駅伝後にも座骨神経痛を発症した。世界陸上後に取り組んだフォームの変更がその原因かもしれないという。
「(変更しようとしているのは)脚の回転だったり、脚を蹴り上げたときに後ろに開く動きをコンパクトにしようとしたり。蹴り上げる動きに意味はなくて、蹴り上げる力を前への推進力にできるように変更したいのです。ただフォーム改善は簡単なことではありません。故障が伴うリスクも仕方ありません」
ニューイヤー駅伝への調整は「ぼちぼちですかね。なんとか合わせて行きたい」という。万全だと自信をもって言うことはできない。だが、世界に近づくために必要な変更と前向きに考えている。実際、入社1年目は12月の日本選手権10000mで2位、東京五輪標準記録突破の快走を見せたが、ニューイヤー駅伝4区はレース中に大腿部を痛め区間16位に終わった。
前回は4区区間5位ではあったが、9人を抜いてHondaのタスキを5位まで浮上させた。5区の青木がトップと32秒差の3位まで追い上げ、6区の中山がトップに立った。4、5区の代表コンビの走りが逆転劇を演出した。
今回も予定通りの練習ができたわけではないが、世界を目指す選手が駅伝で手間取るわけにはいかない。小川監督も「精神力で補うことができる選手。(練習の中断などは)あまり気にしていない」と信頼する。4区なら前回以上の走りが十分期待できる。
マラソン選手が駅伝でも力を発揮するか?
前回のHondaはアンカー7区の土方英和(25)だけがマラソン選手だった。その土方が旭化成に移籍したが、前回3区の小山がこの1年間で二度マラソンを走り、マラソン元日本記録保持者の設楽悠太(31)も3年ぶりに駅伝メンバーに入りそうな状態だという。
小山は前回3区区間8位(9人抜き)の走りを見せた後に、初マラソンに挑戦した。3月の東京マラソンで2時間08分59秒で22位。合格点の成績を残したが、8月の北海道マラソンは2時間14分19秒で11位に終わった。疲れが残った状態でスタートラインに立ってしまったという。
しかし11月の東日本予選は7区区間賞。今季はトラックレースには一度も出場していないが、駅伝のスピードにしっかり対応した。ニューイヤー駅伝本番は「一番長い区間に行くつもりでいる」と、4区に意欲を見せている。「(マラソンをやったことで)スタミナの部分は不安ありません。40km走も何度もやって、駅伝前は(練習の距離走が)30kmですが、気持ち的に余裕もあるので楽になっています」
小川監督は「東日本はどん底ではないにしても、底の状態で区間賞です。さすがというか、地力がつきました。ニューイヤー駅伝は前回と同じ3区も考えていますし、後ろの6、7区もある。4区も含め3、4、6、7区、どこでも行ける」と今季の小山を評価する。
設楽は12月4日の甲佐10マイルで46分59秒と、メンバー入りの可能性を感じさせる走りを見せた。以前はHondaのエースとして、4区で区間賞を3回(15、16、18年)も獲得したランナーである。18年にはマラソンで2時間06分11秒と、日本記録を16年ぶりに更新した。しかし21、22年とニューイヤー駅伝には出場できなかった。設楽自身の状態も上がらなかったが、後輩たちが強力メンバーになったことが大きい。前回の初優勝は、入社3年目までのメンバーで達成した。
「本当に強い後輩たちが頑張って結果が出ました。うれしさも悔しさも残る駅伝でしたが、自分もこのメンバーに入って走りたい。それを一番感じました。来年はどこでも走れる準備をしようと思ってやってきました」
リオ五輪10000mなど代表実績もある設楽が、この姿勢を持つのはチームにとって大きなプラスになる。「甲佐後の奄美合宿も順調にこなしてきました。おそらく6区か7区になりますが、準備はできています」
かつて4区で主役を演じてきた設楽が、後輩たちの成長を認めて自身は後半区間でチームに貢献する。今季のHondaは前回とは違ったメンバー構成になるかもしれない。