“板挟み”の日本「ゼロ回答は日本の立場としては国益には沿わない」

—日本のルールの中の難しさと唯一の同盟国であるアメリカの要求というバランス感、板挟み感みたいなものを感じるんですが。

河野元統幕長:
まさにそうなんですよ。だからもうこんなの蹴ってしまえって話は簡単なんですけれども、でも今後のことを考えて本当にその選択肢が日本の国益になるかということは考えないといけませんよね。日本の場合は2国間安保なので。

—仮に日本が艦船をいまホルムズ海峡に派遣したとなれば、ある意味、紛争行為に加担したと見られかねないが。

河野元統幕長:
要はそういうことですよね。イランとアメリカが戦争終結していない状況でやるとなれば、これは当然、イランから見れば敵対行為になるわけですよね。当然、それはアメリカ側に立ってオペレーションするということは、ごまかしようがないですね。

—2019年に同様にホルムズ海峡で有事が起きて、日本がアメリカから有志連合への加盟を求められた際に、日本は独自の判断で、事態がある程度おさまった後に艦船を近海に送りました。

河野元統幕長:
いま同じことをやるとなると、ここで収集した情報は当然アメリカに渡すというのが前提になると思うんですよ。それは戦闘に利用することになるわけですよね。だからこの警戒監視、情報収集という選択をした場合も、アメリカの戦闘行為に組み込まれるということが十分想定されるんですよね。その根拠法規を行政組織法で、防衛省設置法4条をその根拠にするかとなると、それはあまりにもちょっと乱暴ですよね。

—いずれにせよ、現時点で自衛隊が取りうる行動はなかなかやはり難しいと。

河野元統幕長:
まず自衛隊は法律的根拠がないとできない。今のトランプ大統領のニーズにぴったり合う、いわゆるホルムズ海峡におけるタンカーの護衛ということを実施するためにぴったり合う法律はなかなかないんですが、しかしながら、ゼロ回答というのはやはり日本の立場としてはちょっと、国益には沿わないと思うんですよね。だから今、政府は苦労していると思うんです。だからここはいま、政府内で大激論されているんじゃないかと思いますよね。

—どうして日本はこうした厳しいハードルを設けているんでしょうか。

河野元統幕長:
まず自衛隊法の作りが、いわゆる警察の延長としての位置づけだったので、軍隊として出発していないので、法律で書かれていることしかできない組織なんです。それがある意味、自衛隊の行動に制約をかけるという意味に作用してきたんですけどね。自衛隊というのはやはり軍隊ではない、戦力ではない、という前提で出発したものですから、他の軍隊とは違ういろんな制約を背負っているということです。

—総理は、トランプ大統領は日本の自衛隊を巡るルールも把握されていると答弁もされているが、どこまで理解が得られるのか。

河野元統幕長:
おそらくそれは(アメリカ側に)説明はしていると思います。日本っていうのは、やはり憲法9条からこういうことになってるということで、自衛隊は国際的にはいわゆる軍隊なんですけど、国内的には軍隊でない戦力以下という位置づけなんですよね。ここからくる制約というものがありますと。それはトランプ大統領が理解できるかどうかは別にして、説明をしているんだろうと思います。

アメリカとイラン、そして法的根拠との“板挟み”のなか、平和国家・日本はどのような説明をするのかー。2度目の日米首脳会談、その行く末が注目される。

TBS報道局政治部・防衛省担当 渡部将伍