裁判所の判断「脳腫脹の所見から外力の強さを推定することはできない」

判決時の法廷(福岡地裁・2026年3月)

裁判所は、検察側が主張の根拠とした医学的所見についても詳細に検討した。

検察側は、受傷後早期に脳幹等を含む脳全体に非常に強い脳腫脹が認められることを主たる根拠として、後頭部の出っ張りより下側に強い外力が加わった旨を主張していた。

しかし裁判所は、検察側が請求した脳神経外科医の証言について以下のように判断した。
「医師は、受傷後早期に脳幹等がこれほど腫れるのはこの付近に強い外力が加わったとしか考えられない旨証言するものの、強い外力が加わると短時間で脳が腫れるメカニズムについては、医学的な説明をすることは難しいと述べるにとどまり、検証可能な理由が示されているわけではない」

一方、弁護側が請求した脳神経外科医は、スツール(背もたれ・肘掛けがない椅子)からの転落等の家庭内の事故事例を紹介し、現に弱い外力であっても受傷後早期に脳幹が腫脹することがあり得ることや、強い外力が加わって脳挫傷などが生じている事案においても、広範な脳腫脹が生じるとは限らないことなどを指摘し、脳腫脹の程度やその進行の速さから外力の強さを測ることはできないと証言した。

福岡地裁は
「検察側が請求した医師の証言は、弁護側が請求した医師の見解を覆せるほどの根拠を示せていないといわざるを得ない」
と判断。
「受傷後早期に脳幹等に強い脳腫脹が認められたとしても、その所見から直ちに外力の部位や強さを推定することはできず、外力の強さが脳腫脹の進行速度や程度に影響したというのも可能性の一つにとどまり、その余の可能性も残るというべきである」
と結論づけた。