年末には故郷の神社のしめ縄を取り換える


地区の顔役でもある今野さん。このほかにも、地区の神社や自宅近くの手入れを続けています。毎年、年末の大安になると、帰還困難区域にある神社で、妻のタマノさんとともにしめ縄を取り換え、新年を迎える準備しています。

妻のタマノさん。今野さんとともにしめ縄を取り換える。


真新しいしめ縄を前にタマノさんは「誰も参加しないからね。バラバラになっているというのは気持ちの整理がなかなかできませんね」と心情を語りました。

避難先に作った石板。赤宇木(津島)までの距離が刻まれている。


今野さんは、避難先の敷地内に、津島の距離と方角を刻んだ石版を作り、毎日、その方向を見て、一日を終えるといいます。避難先から自宅までは直線距離で31.22キロメートル。決して遠い距離ではありませんが、帰還への道筋はほとんど進んでいません。

今年も避難先の滝桜と同様に、故郷の国道沿いに植えた桜も、見頃を迎えました。その写真を見せながら、今野さんは笑いながら話しました。

今野さん「きのう見てきたら、花が咲いてましただが、実際には帰ることができないということです」

浪江町赤宇木地区。期間の見通しはいまも立っていない。


福島県内の帰還困難区域のうち、特定復興再生拠点に指定された区域では避難指示の解除に向け、除染やインフラの整備が進んでいますが、今野さんの自宅がある赤宇木地区では、いまもその見通しは立っていません。

政府は去年、希望する世帯に限って除染などを進める方針を示しましたが、個別に避難指示を解除しても生活が成り立たないなどの理由から、住民は一括して除染することを求め続けています。

故郷への思いを語る今野さん。原発事故から11年が過ぎた。


震災から11年あまり。今野さんが望む故郷への帰還が叶わないまま、今年も春が終わろうとしています。