(ブルームバーグ):米半導体大手エヌビディアは長らく、世界の人工知能(AI)分野でキングメーカーとして君臨してきた。だがトランプ政権は今や、この業界に正式に関与し、同社のような強い影響力を持とうとしている。
米当局は、米国の承認なしに世界のいかなる場所にもAI向け半導体を出荷することを制限する規制案を作成した。これにより米政府は、各国がAIモデルの学習や運用のための施設を建設できるかどうか、またどのような条件で認めるかについて、幅広く統制することになる。
事情に詳しい複数の関係者によると、提案されている規制は、エヌビディアやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)などが製造するAIアクセラレーターのほぼすべての輸出について、米国の許可取得を企業に義務付ける内容となる見通しだ。現在は約40カ国を対象としている輸出規制を、世界規模に拡大する。これらの半導体はテック業界で最も求められている部品だ。オープンAIやアルファベットといった企業は、ChatGPTやGeminiなどのサービスを運営するデータセンターに設置するため、これらを数千単位で購入している。
このニュースを受け、エヌビディアとAMDの株価はこの日の安値を付けた。エヌビディアは一時1.9%安、AMDは2.3%下落した。

トランプ政権は、米国製AIの世界的な利用を望んでいると繰り返し表明しており、今回の規制案はエヌビディア製品の輸出禁止を目的としたものではないとしている。むしろこの規制は、AI産業における「門番」として米政府を位置付けるものだ。企業のほか、場合によっては各国政府も貴重なアクセラレーターを購入するために、米商務省の承認を得る必要がある。トランプ政権がその許可をどのように配分するかによって、各国が重要なデジタル基盤を構築できるかどうかが左右されることになる。この技術は、多くの世界の指導者が経済成長や企業競争力、軍事的主権の鍵とみなしている。
匿名を条件に協議内容を語った関係者によると、具体的な承認手続きは、企業が求める計算能力の規模によって異なるという。エヌビディアの最新型画像処理半導体(GPU)「GB300」を最大1000個まで出荷する場合は、一定の免除措置の可能性も含め、比較的簡易な審査を受けることになる。より大規模なクラスターを構築する企業は、輸出許可を申請する前に事前承認を得る必要がある。対象となるデータセンターの内容次第では、事業モデルの開示や米政府による現地視察の受け入れといった条件が課される可能性もある。
さらに大規模な導入、すなわち1社が1国で20万個を超えるGB300を保有する場合には、受け入れ国の政府も関与する必要があるという。米国は、そのような輸出を厳格な安全保障上の約束を行い、かつ米国のAI分野に「見合う」投資を実施する同盟国に限って承認する方針だとしている。規制案には投資比率は明記されていないという。参考までに、20万個のGB300は、第三者向けにAI半導体を貸し出す事業を手がける英エヌスケールが、マイクロソフトに対し、米国と欧州の4拠点で供給を計画している数量に相当する。同社はこの契約について、「これまでに締結されたAIインフラ契約の中でも最大級だ」と説明している。
半導体の輸出管理を担当する商務省産業安全保障局(BIS)やエヌビディア、AMDはいずれもコメントの要請に応じなかった。
事情に詳しい関係者は、トランプ政権の枠組みは最終決定には至っていないと強調した。現在、複数の連邦政府機関の当局者が意見を寄せている段階だという。草案は大幅に修正される可能性があるほか、他の優先課題のために棚上げされる可能性もある。
それでも今回の動きは、昨年5月にバイデン前大統領の方針を撤回して以降、トランプ政権が打ち出した世界的な半導体輸出戦略としては最も踏み込んだ措置となる。トランプ政権当局者は、大半の国に対するAI半導体販売を規制し、輸出量に上限を設けた前政権のいわゆる「AI拡散ルール」について、過度に負担が大きいと批判してきた。世界に中国製ではなく米国製のAI技術を利用してもらう方針を一貫して掲げ、とりわけグローバルサウス(新興・途上国)で米国製AIの輸出を促進する取り組みを進めている。
トランプ政権の手法が最終的により厳格なものになるか、あるいは緩やかなものにとどまるかは、現在検討している世界規模の許可要件を当局がどのように運用するかにかかっている。
米政府が半導体販売を迅速に承認し、付帯条件が少なければ、世界のAIインフラ整備は単に事務手続きが増えるだけで、従来通り進展し続ける可能性がある。一方、官僚的な遅れや長引く交渉が生じれば、事業計画に支障を来すことになる。昨年、米国がアラブ首長国連邦(UAE)との半導体輸出合意を発表してから、実際に輸出許可が下り始めるまで数カ月を要した。許可はUAEが自国内で1ドル投資するごとに米国へ1ドルを投資することを条件としていた。
大きな不透明要因は、1ギガワット以上の大規模データセンター建設を目指すフランスやインドといった国に対し、米国がどの程度の資金拠出を求めるかだ。また、トランプ大統領が関税戦略を見直す中で、より広範な外交交渉において半導体輸出規制をどのように活用するかも焦点となる。大統領は昨年、欧州連合(EU)などで導入されたデジタルサービス税への対抗措置として、半導体の輸出規制を示唆していた。
原題:US Mulls Requiring Permits for Global Nvidia, AMD AI Chip Sales (1)(抜粋)
(株価や規制案の詳細を加え、更新します)
--取材協力:Maggie Eastland.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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