詩を我々の世界にもう一度取り戻してくれた人

永瀬清子さん

──永瀬さんの魅力は、どのように感じられますか。

(若松英輔さん)
「永瀬さんは、今日の講演でも少しね、お話申し上げたんですけど、詩というものを、世に言われている詩人の世界から、我々の世界にもう一度取り戻してくれた人なんだと思うんですよね。

近代日本は、知らないうちにみんなのものだった詩が、詩人のものになっちゃったと思うんですよ。

本当は誰でも詩を書けるはずなのに、詩人と呼ばれる人しか詩を書いちゃいけないかのような雰囲気すら生まれている中で、やっぱり永瀬さんは、いやそうじゃないって。

詩を書く必要がある人がね、そのときそのときに言葉と出会い直せば、そこに詩が生まれるんだから、誰だって詩人になれるんだっていうのが永瀬さんの確信だったと思うんです。

だから、やっぱり詩壇と呼ばれている特別な世界の占有物じゃなくて、ほんとに人々に開かれたものなんだってことに、もう一回詩に命を与えてくれたのがやっぱ永瀬さんじゃないかって。

永瀬さんの詩ってのは誰にも似てませんでしょう。とっても独特な世界。読めば、あー、これは永瀬さんが書いたってことがなんか我々に伝わってくる。

詩というのは、それでいいんですよね。誰かのように書かなくていい。その人がその人であれさえすればいいわけだから。

詩ってやっぱり知らないうちにマナーができてたと思うんです。お作法があったような気がするんですよ。

それは何も決まりごとがなくて自由にやっていいってそういうことではなくて、もっとその人の中にあるやっぱり、切迫したものですね。

そういうものに促されて詩が生まれてくると、もうそれだけで十分美しいってことを永瀬さん教えてくれてんじゃないかなと思う。

だから、わざわざ美しくしなくても、切なるものは自ずから美しいってことを永瀬さん教えてくれてんじゃないかなと思いますけどね」