「だましてください 言葉やさしく」

(沢知恵さん)
「永瀬清子の最も有名な詩『だましてください言葉やさしく』に、私が曲をつけたものをお聴きください。アルバム『花はどこへ行った』からです」

沢知恵CD『花はどこへ行った』

だましてください言葉やさしく
よろこばせてくださいあたたかい声で。
世慣れぬわたしの心いれをも
受けてください、ほめてください。
あああなたには誰よりも私が要ると
感謝のほほえみでだましてください。

その時私は
思いあがって傲慢になるでしょうか
いえいえ私は
やわらかい蔓草のようにそれを捕えて
それを力に立ち上りましょう。
もっともっとやさしくなりましょう。
もっともっと美しく
心ききたる女子(おなご)になりましょう。

ああ私はあまりにも荒地にそだちました。
飢えた心にせめて一つほしいものは
私があなたによろこばれると
そう考えるよろこびです。
あけがたの露やそよかぜほどにも
あなたにそれが判ってくだされば
私の瞳はいきいきと若くなりましょう。

うれしさに涙をいっぱいためながら
だまされだまされてゆたかになりましょう。
目かくしの鬼を導くように
ああやさしい拍手で導いてください。

「永瀬清子は『現代詩の母』と言われていますが、『現代詩の長女』の方が有名かもしれませんね。

『現代詩の長女』は茨木のり子です。

私は20代から茨木のり子の詩を歌ってきて、『茨木のり子を歌います』と言うと、たいがい反応があります。

しかし、東京などで『永瀬清子を歌います』と言っても、みなさんキョトンとします。

岡山でしたら、永瀬清子の名前は知っている人は比較的多いですけれども、全国区では『現代詩の長女』に比べて、はるかに知名度の低い『現代詩の母』です。

私は永瀬清子の詩も読んでいましたが、正直、歌いたいとは思いませんでした。

茨木のり子の詩は、肌感覚として親しみがありましたが、永瀬清子の詩はちょっと距離があるというか、近づきがたいものを感じていたんですね。
私も歳を重ねて、また2014年から、永瀬清子が生きた岡山の地で暮らすようになって、ようやく歌えるようになりました」