今シーズン限りでの引退を表明している、白馬村出身でノルディック複合の渡部暁斗選手です。競技生活の集大成へ。「季節はずれの満開の桜を咲かせたい」と、6度目となる最後のオリンピックに挑んでいる日本のレジェンドに迫ります。

「今シーズン限りでの現役引退を皆様にお伝えしたく、きょうはお集まりいただきました」
この冬をラストシーズンと決意したノルディック複合のレジェンド。自身の競技人生を桜の木になぞらえ、最後の大舞台での意気込みを語りました。

「花びらの最後の一枚が散っていくのをさみしく待つつもりはなく、2月のイタリアで、季節はずれの満開の桜を咲かせて終わりたい」
白馬村出身の渡部暁斗選手37歳。過去、5大会連続でオリンピックに出場。
これまでに銀メダル2つ、銅メダル2つを獲得しています。

かつては日本のお家芸とも言われたノルディック複合。
アルベールビル、リレハンメルの団体で連覇を果たしたのが「キング・オブ・スキー」と呼ばれたレジェンド・現在の長野市長の荻原健司さんです。
1998年の長野オリンピック。この大会で、日本は5位と惜しくもメダルを逃し、以降、オリンピックの表彰台からは遠ざかります。
2014年。それを打ち破ったのが渡部選手でした。ソチオリンピックの個人ノーマルヒルで銀メダルを獲得。20年ぶりとなる「表彰台」で日本の復活を世界に知らしめました。
「金メダル狙って勝負仕掛けたんですけど、僕の実力不足というのがあって銀メダルでしたけど」

幼いころから白馬の自然の中で育った渡部選手。ジャンプを始めたきっかけは、荻原兄弟が出場した長野オリンピックでした。
「もう吹雪で全然ジャンプなんか見えないけど、やっぱりその会場の熱気というか、音と肌で感じる熱気、僕の中でスイッチが入ったような感覚があって」

小学校の卒業アルバムに書いた目標は「世界一」。所属先の北野建設ではゴルフ場のコースの坂を走りこむことも。「キング・オブ・スキー」からの教えを受けました。

2018年、ワールドカップのチャンピオンとして挑んだ平昌オリンピック。個人ノーマルヒルでは2大会連続の銀メダル。
前回2022年の北京ではトップとわずか0.6秒差で、金メダルにはあと一歩、届きませんでした。
「なんであそこでもうちょっと頑張れなかったんだろう。もうちょっと頑張ればよかったのに…と思うんですけど、走っている最中は本当に精一杯でした」
ノルディック複合のレジェンドの称号を受け継ぎ、スキー界で最も権威がある「ホルメンコーレン・メダル」も授与された渡部選手。

年齢は37になり体力の衰えを感じ始めていました。
「正直その自分の競技力っていうのは、ベストではない。ベストな状態ではないですし、その全盛期みたいなものは通り過ぎているなとは思っている」
ただ、「感覚」は研ぎ澄まされていきます。
「勢い自体は若い時の方がありますけど、技術的な部分とかトレーニングに対する知識とか、マネジメントする感覚とかは今の方が全然良くて、正直結構、キャリアの中でもベストに誓い感覚」
今シーズンのワールドカップで、歴代最多となる通算296試合出場を達成。ただ最高成績は13位。本人は不安も口にしました。

「(W杯で)すごく悪いパフォーマンをしていて、自分が行くよりも、代わりに誰かもう1人を連れて行った方がいいんじゃないかと思ってしまうようなパフォーマンスしかできていないのが心残りの内情。オリンピックって何が起こるかわからないというのが、わずかな希望を見いだせている部分。諦めない姿を見ていただけるようなオリンピックになればいい」
迎えたオリンピックでの初戦。ノーマルヒルに挑んだ渡部選手は、ジャンプで100mを飛び11位につけます。
「ここにきて一番いいジャンプができたので良かったです」
クロスカントリーでは、緩くなった雪に苦しめられる厳しいコンディションに。
最後まで粘りの滑りを見せ、11位でフィニッシュしました。
「これが今の実力かなという感じですね。苦戦している中で深い雪で、自分の体力もいつの間にか削られてしまっていたという感じで、人生で一番きつかったかもしれない。今できるベストは尽くせたかなと思います」
日本時間の17日、個人ラージヒルに出場する渡部選手。季節外れの満開の桜を咲かせるためー。奇跡を信じ、最後の最後まで戦い抜きます。














