「スケートリンクの斜面を登る感覚」強風とアイスバーンの脅威

<大西記者>
その時の富士山の状況はいかがでしたか?

<坂上隊長>
入山した時は雲もなく快晴だったんですけど、六合目あたりから一気に天候が崩れまして、非常に強い風が吹き始めました。気温も手元の気温計でマイナス20度と厳しい環境でした。天候が一瞬で変わる富士山の厳しさを、若い隊員たちも身をもって体感できたと思います。

〈大西記者〉
冬の富士山の気象条件は、どのような特徴がありますか?

<坂上隊長>
富士山は独立峰で、森林限界を越えると木が一切ありません。そのため風を遮るものがなく、非常に強風になります。標高が高く、雪というよりも氷の斜面、いわゆるアイスバーン状態です。スケートリンクの斜面を登っているような感覚ですね。

<大西記者>
30年以上救助隊に所属されていますが、富士山での活動は「慣れている」という感覚はありますか?

<坂上隊長>
いえ、やはり30年以上やってますけど、特に厳冬期の富士山は常に慎重さが求められます。「二重遭難」(救助に向かった隊員自身が遭難する)のリスクが他の山より格段に高い山だと思っております。転倒や滑落の危険と常に隣り合わせです。