■イスラム教徒の墓が足りない “土葬”墓地に反対の声も

別府ムスリム協会 カーン代表
「これが私たちの土地です」
別府ムスリム協会のカーン代表。大分県内に土葬できる墓地を作ろうと、4年前、別府市の隣、日出町の山中に土地を購入しました。
8600平方メートルほどの敷地に、100基ほどの土葬墓地の建設を計画しましたが、地元住民から反対があったといいます。

カーン代表
「ここに土葬埋葬すると近くの湖の水が悪くなると言われた」
ここから1.2キロほど離れた場所にある、ため池。米などを作る農業用水として使われているため、地元住民から土葬による水質への影響が懸念されたのです。

その後、町側から代替地の提案がありましたが、今度は隣の杵築市の住民が猛反対。計画は、いまも宙に浮いたままの状態です。
カーン代表
「村の人たちは、外国人をたぶん初めて見た。そのようなこと。住民はとても良い人、悪い人ではない」
地元住民に、話を聞くことができました。

土葬墓地に反対 日出町の住民
「別にイスラム教徒さんがどうのこうのということは何もない。人間の遺体を埋葬すること自体、気分があまりよくない」
風評被害を懸念する声もありました。

土葬墓地に反対 杵築市の住民
「あそこは住み良いとこ、水も綺麗、空気も綺麗。それを言われなくなる。それが一番悲しい」
日出町は、私たちの取材に対し…

日出町役場(news23の取材対し)
「地元住民との合意の締結、及び墓地の開設に反対している近隣自治体の住民への説明等による、不安の払しょくに努めていきたいと考えています」
■キリスト教徒による修道院が受け入れ 日本で土葬墓地を増やすには

計画が進まない中、イスラム教徒の墓を受け入れる動きもあります。同じ地域のキリスト教徒による修道院です。
土葬を行うこちらの墓地では、一画をイスラム教徒のために提供しています。

トラピスト修道院 塩谷久 代表役員
「世界はキリスト教徒だけで、成り立っているわけじゃありませんから、他の宗教の方を私達の墓地に受け入れて一緒に眠っているというのは、ある意味でとてもいい光景じゃないかなと思います」
修道院では、定期的に水質検査を実施していますが、問題は一度も確認されていないといいます。
ただ、イスラム教徒を埋葬できる期間は12年と決められました。カーンさんはその間に安住の地を確保しなければなりません。

日本で土葬の墓地を増やすには、どうしたらいいのか。
そのヒントが、静岡県にあります。私の父が眠るイスラム教徒専用の墓地です。ここに、新たな土葬墓地の形に取り組む人がいます。管理人の勝澤洋さんです。

清水霊園イスラーム墓地 勝澤洋 管理人
「一番は衛生的で安全性がある埋葬墓地を作ろうというテーマで作りました」

地元のイスラム教徒に相談しながら考案したという土葬のお墓。コンクリートで囲むなどして工夫したといいます。
勝澤 管理人
「ムスリムの方の人数って急激に増えているんですよ。これからも本当もっと増えていくと思いますんで、早い段階解決していかないと駄目な問題」
そのためにも、私たち日本人が“イスラム教徒のことを知ること”が大切だと話します。
一刻も早く、安らかに眠る場所を作りたい。カーンさんは、そう願っています。

カーン代表
「(住民は)みんな差別じゃないと言っています、私は信じている。できるだけ皆と仲良くしてお墓を作りたい。お墓は絶対必要です、それしかないです」