映画好きが映画『国宝』に関心、でも小説は……
大ヒットとなった映画と小説の『国宝』。それに興味を持ったり接したりした人は、ふだんから映画や読書をたしなんでいるのか。それとも、『国宝』が特別に目を引いたのか。
そのあたりをデータで示すべく、パターン別に「好きな余暇の過ごし方」を集計。昨年実施のTBS総合嗜好調査では、70個の選択肢からあてはまるものをいくつでも選んでもらいますが、各パターンのベスト5(同率5位が2つある「映画◯・小説✕」はベスト6)は次の棒グラフの通りです。

これを見ると、「映画◯・小説◯」の半分や「映画◯・小説✕」の4割は「映画をみに行く」のが好きな人で、元々劇場で映画を見る趣味の持ち主が映画『国宝』にも関心を示した模様。
「好きな余暇の過ごし方」には「読書」という選択肢もありますが、回答者全体の選択率は18%で、どのパターンでもベスト5には届かず。
各々の選択率は「映画◯・小説◯」24%、「映画◯・小説✕」23%、「映画✕・小説◯」16%、「映画✕・小説✕」16%で、必ずしも読書好きだから小説『国宝』に関心がある、ということでもなさそう。
まとめると、映画館に出かけるのを好む人が映画『国宝』への関心を支えている面が大きそうなのに対し、小説『国宝』への関心は読書好きを超えて拡がっている感じ、といったところでしょうか。
どうせ作り物に巻き込まれるなら
この集計をさらに眺めると、映画か小説で1つでも◯があるパターンには、「旅行」や「家族と外で食事をする」といった、家の外に出る余暇の過ごし方が含まれるのに対し、「映画✕・小説✕」にはそれがありません。
一方、「映画✕・小説✕」では、2~4位にネットやスマホ関連の行動がランクイン。他の3つのパターンでもそれらがひとつずつ入っているものの、全部入りなのは「映画✕・小説✕」の特徴的です。
予期せぬことがドーンと起こって巻き込まれてしまいがちな昨今。『国宝』現象に巻き込まれる人も多かったですが、そうではない「映画✕・小説✕」の人たちでは、『国宝』の代わりにネットやスマホで見聞きするものに巻き込まれる人が多いかなあ、などとふと考えました。
映画や小説は、どんなによく出来ていても作り物だと分かっていて、分かっているのに没頭し感動してしまうところに妙があります。
しかし、ネットやスマホで見聞きするものには、作り物かどうか分かりにくいものもあり、真実のつもりでフェイクに没頭し感動してしまうこともありそうな話。真に受けている分、余計にタチが悪いかも。
どうせ作り物に巻き込まれるなら、一級のエンタテインメントのほうがはるかに好ましいと思うのは、筆者だけでしょうか。
注1:TBS総合嗜好調査は、衣食住から趣味レジャー、人物・企業から、ものの考え方や行動まで、ありとあらゆる領域の「好きなもの」を調べる質問紙調査です。TBSテレビが、東京地区(1975年以降)と阪神地区(1979年以降)で毎年10月に実施し、対象者年齢は、1975年が18~59歳、76~2004年が13~59歳、05~13年が13~69歳、14年以降は13~74歳となっています。
注2:「最近話題になった作品で読んだもの・読みたいもの」では、調査前の1年間に話題になった本を選択肢(25年調査では30個)にしており、刊行年は必ずしも直近1年間ではありません。また、「見て面白かった・ぜひ見たいと思う映画」は邦画と洋画を分け、それぞれ昔からのシリーズ作や名画と、調査前の1年間に公開された新作を選択肢にしています。25年調査では、40個ある邦画の選択肢のうち、23個が新作でした。
注3:「見て面白かった・ぜひ見たいと思う邦画」には、例えば選択率24%の「踊る大捜査線シリーズ」など、人気の高い旧作もありますが、ここでは特に新作23個について集計しました。
引用・参考文献
● 映画『国宝』公式サイト
●「国宝 (小説)」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』
● 種田陽平(2025)美術監督インタビュー 『国宝』劇場用パンフレット 東宝株式会社ライツ事業部 p.18.
<執筆者略歴>
江利川 滋(えりかわ・しげる)
1968年生。1996年TBS入社。
視聴率データ分析や生活者調査に長く従事。テレビ営業も経験しつつ、現在は法務・コンプライアンス方面を主務に、マーケティング&データ戦略局も兼任。
【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。














