■W杯初の女性審判員 自信を持つことで選手と対峙できる

国山キャスター:
各国の選手が判定への不服を申し立てることや、メッシのようなスーパースターと対峙することもあると思いますが、そんな相手にも揺るがないメンタルはどのように鍛えていますか。

山下良美さん:
特別に私はメンタルを鍛えるトレーニングみたいなことをしているわけではないですが、でも、どの試合でも背伸びせず自分のできることをしっかりやろうという気持ちで臨んでいるので、それがもしかしたらそういう場面で自信を持って選手と対峙できることに繋がってるのかもしれないと思います。

国山キャスター:
エムバペのような選手はものすごく速いですよね。フィジカル面ではどういうトレーニングを積むのですか?

山下良美さん:
エムバペ選手のようなすごく速い選手にヨーイドンではとても追いつかないですから、先に動き出したりとか、予測をして次にこんなボールが来るんじゃないか、こんなふうに準備をしなきゃいけないんじゃないかって考えながら先に動き出したりすることで、そういうことに対応しています。

小川キャスター:
今回のワールドカップでジャッジが大きく注目されたのが“三笘の1ミリ”でした。VARがあることを審判としてはいかがでしょうか。

山下良美さん:
VARがあることで審判がいらなくなるんじゃないかと、そんな話を聞くこともありますけれど、私はそうは思っていません。やっぱり笛を吹いたり、ファールの笛を吹いたり、イエローカードを出したりということをするだけが審判の役割ではないので、それ以外にもそれ(ファールなど)が起こらないように予防したり、こんなこと(ファールなど)が起こりそうだから、それ(ファールなど)が起こらないように予防することも大きな役割の一つなんですね。なので例えば選手が興奮してもうどうなってもいいから選手に突っ込んでしまおうって思ったときに「ちょっと気をつけてください」って声をかけたら、もしかしたら次のプレーが変わってくるかもしれないですし、その近くに審判員が立っていれば、もしかしたら抑止力になって何かプレーが変わるかもしれない。そういうこともあると思うので、やっぱり今は人間にしかできないことだなと思っています。

■目指すのは「女性審判員が当たり前になること」審判員というものに注目して

小川キャスター:
女性初として思うことは?

山下良美さん:
特別女性だからということで意識していることはないですし、大変に思うこともないですが、今の時点では女性初であっても、まずは審判員というものに注目してもらいたい。審判員というものを知ってもらいたい。そして男性の試合を女性の審判員がやっていることも知ってもらいたい。いずれは男性の試合を女性の審判員が務めるということが当たり前になることを目指していきたいと思っています。そのためには今回私はワールドカップに参加させていただきましたけれども、こういう機会を継続していきたい、継続させていかなきゃいけないなと思っています。

小川キャスター:
4年後のワールドカップでの目標は?

山下良美さん:
私はそんなに先のことまで考えられない性格なので、目の前の試合一つ一つを積み上げていきたいと思いますが、でもやっぱりワールドカップに日本のチームと同様に、日本の審判員も継続して参加することはサッカーの発展にとっても大事なことだと思いますので、それは続けていきたいと思っています。

小川キャスター:
山下さんの今後の活躍を楽しみにさせていただきます。本当にありがとうございました。