そもそも日本政府は、憲法9条のもとで持つことができる自衛隊の能力について、「自衛のための必要最小限度」と定めています。そのため防衛省は、例えば「大陸間弾道ミサイル」「長距離戦略爆撃機」「攻撃型の空母」などは「相手国国土の壊滅的な破壊のためにのみ用いられる攻撃的武器」だとして、保有できないとしています。

そしてキーワードは、憲法9条の精神に基づく「専守防衛」。それに、日本を「盾」アメリカを「矛」に例える「日米同盟」です。日米安保条約に基づく役割分担では、日本は“守り”に徹し、“他国への打撃力”はアメリカが担うことになっているのです。「矛」の役割はアメリカが担ってくれる前提で、日本は米軍に沖縄などの基地を提供し駐留経費も負担しています。

■「日米同盟」役割変わる?
そこで今回、「反撃能力」のために新たに導入しようというミサイルの性能ですが、この「矛」「盾」の役割も変わるのでしょうか?
まずは「12式ミサイル」の改良型は、1000kmほどまで射程を伸ばすとされています。戦闘機用のミサイル「JASSM」も射程は900km。そして、トマホークは最大射程2500キロに及びます。仮に東京を中心とすると、朝鮮半島はもちろん、北京、台湾まで入る距離です。
さて、こちらは1981年の鈴木内閣での政府答弁。「外国の基地を叩く攻撃はアメリカ軍が受け持つ機能」との見解が示されました。歴代政府はこうした考えを踏襲し、去年(2021年)、菅総理も「今後とも日米の役割分担を変更することは考えていない」と答弁していました。ところが今回、岸田内閣で「反撃能力」を持つことを決め、日本の防衛政策は大転換へと向かうことになります。

軍事に詳しい小泉悠さん(東京大学先端研・専任講師)は、「戦後、保安隊から自衛隊に組織改編したくらいの大きな変化」だとし、「一定の抑止力がある」と評価するも、「それを十分に発揮するまでにはかなりの金と時間を費やすことになる。なぜ今必要なのか、政府の十分な説明がない。」と指摘しています。防衛費倍増の費用対効果が問われています。
(「サンデーモーニング」2022年12月18日放送より)














