「ついていきます」 覚悟を伝えた言葉
初めての外来リハビリを終えた日、帰り際に狩俣さんにかけられた声を、松田さんは鮮明に覚えている。
松田真梨子さん:
「ついていきます、と声をかけてくださった。その頃は、言葉の回復が当初想像してたよりも簡単にはいかないとか、大変な時間と労力がかかることを身をもって実感されていた時期だと思うんですね。その制限された語彙の中から選び出された言葉で、長く険しい道を進んでいく覚悟が感じられた」
「治療者側の専門性や、治療技法だとか、そういったこともさらに研鑽させなければいけないと、強く思いました」
言語聴覚士とアナウンサー、二人三脚の闘いの第二幕が始まった。
松田さんに与えられた大量の宿題は、狩俣さん自身が「よくこんなにプリントがありますね」と驚くほどだったが、前向きに取り組んだ。
「どんなに小さい課題でもすごく真剣に取り組み、克服しようとする強い姿勢がすごく感じられた。与えられた宿題を提出しなかったことはない、必ず持ってきました。訓練をお休みしたこともありません」
「2、3時間の自主訓練を、言語訓練とは別で、自宅でされるんです」
発症後には書くことができなかった自分の名前を何度も何度も手帳に書き、手帳2冊を使い切った。五十音や、掛け算九九。学習ドリルを何十冊もこなして、一度失われたすべてを、一つずつ取り戻していった。

















